12/05/2009

2012

2012 (☆☆☆)


新作が待たれるジェームズ・キャメロンの『アビス』が1989年公開だから、CGI によるVFX がそれまでの特撮技術にとってかわって大々的に用いられるようになって、はや20年が経つ。CGI の技術そのものも進化を続けてきたから、少し大げさに言えば、今日では事実上、どのような映像表現であっても、ほとんど制約なしに、自由自在に創りだすことができるようになったわけだ。もちろん、それなりの手間暇をかけないと「実写レベル」で説得力を持った映像には仕上がらないが、今日ハリウッドが送り出す大作商業映画ではさすがに一定レベルをクリアしてくる。こうなると、いよいよその技術を使って何を表現するのか、何を見せるのかという最も本質的なところが問われることになるだろう。

そんな話から始めるのは、スケールは大きいが中身はスカスカのバカSF映画ばかりを撮り続ける、ある意味で敬愛すべきクリエイター、ローランド・エメリッヒの新作『2012』は、何でも描けるようになってしまった時代に何を描いて見せるのかという点において作り手の真価が問われる作品である、と思うからである。マヤ暦が2012年で終わっていることをモチーフに、世界の終焉を描くという企画である。太陽の異常活動をきっかけとして地球環境が大変動を起こし、いまあるかたちでの世界が文字通りに崩壊していくわけだが、ともかくその崩壊するさまを、言いわけ程度のストーリーでつないだものだといってよい。未曾有の災害を描くことにかけては第一人者を自認しているエメリッヒのこと、ここぞとばかりに心血を注いだに違いあるまい。これまでの彼の作品のなかでも相当に力が入っている部類だろう。

正直に言えば、もともと彼の作る映画に対する期待値は高くない。だから、想像したよりも面白かった、ということでしかないような気もする。しかし、この作品のディザスター表現はかなり新鮮だ。地震、噴火、津波、ありとあらゆる天変地異が一度に押し寄せてくるわけだが、それによって都市が、大陸が、文明が、どのように壊れていくのかという点において、これまでに見たことのないような独創的な映像が次から次へと惜しみなく繰り出される158分なのである。長尺ではあるが最後まで退屈はしない。エメリッヒ本人と、盟友(制作・音楽・脚本)のハラルド・クローサーが手がけた脚本は、想像を超えない範囲でつまらないのだが、それを差し引いても余りあるイマジネーションの充実度は劇場で体験する価値があると思う。(まあ、今になって思えば、これを3Dで作っていないことが悔やまれるというところか。)

主人公を演じるのは、同年代を過ごしてきた観客の代表としてのぼんくら中年、ジョン・キューザック。適度な個性で画面に埋もれることなく、本当の主役はVFXを駆使したド派手なディザスターであることをわきまえた狂言回しとしてなかなかよいキャスティング。政府の陰謀をラジオで発信し続ける危ないおっさんをウディ・ハレルソンが楽しそうに演じているのが笑いどころだろうか。

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