9/17/2011

Battle: Los Angels

世界侵略:ロサンゼルス決戦(☆☆★)

映画の冒頭で "World Invasion: Battle Los Angels"とタイトルが出るのは、これが世界公開タイトルということ?

異星人の同時攻撃によって世界の主要都市が次々に陥落。LAでは主導権を取り戻すための空爆が計画され、空爆エリア内に取り残された民間人の保護を命じられた海兵隊の一部隊が、困難な状況で奮闘する話である。大きな事件を俯瞰的な視点ではなく、ミクロ視点で描く昨今の流行に則った作りの「戦場映画」である。主人公らの部隊の活躍により、反転攻勢への糸口をつかんだところで映画の幕が閉じる。

かなり、FPS(ファースト・パーソン・シューティング)のゲームのような雰囲気の映画である。ミクロ視点に寄せるとは、究極のところは主人公なりなんなりの主観映像になるということだろう。それはそれでよいのだが、同時に、自分たちがどういう状況に置かれているのかという俯瞰マップを用意する親切さがあれば、ゲームとしてはプレイしやすくなるだろうし、映画としてはサスペンスを醸成し、より効果的に、ドラマティックに物語を語ることができただろう。

物語としては、海兵隊の主人公らが警察署に残された民間人を救出、空爆予定エリアの外に脱出し、前線基地に辿り着くというミッションを軸に物語が構成されている。こういう話は、それぞれポイントのなる場所の位置関係を上手に示し、観客の頭の中に地図を作ってしまうことが重要だ。空爆エリアがどこで、主人公らの現在地がどこで、警察署がどこにあり、空爆エリア脱出のためにどういうルートでどこに向かう必要があり、前線基地がどこにあるのか。そういったことである。

この映画では、作戦開始前に空爆エリアや他の部隊の展開場所などを説明する地図が短時間画面に映るので、作り手がこうしたことを全く考えていなかったわけではないと思われる。が、それ以降、観客と位置関係をシェアできるような演出はほとんど存在しない。

そうはいっても、民間人が同じビルのなかで右往左往するだけだった『スカイライン 征服』に比べるとはるかに「映画」としての骨格がしっかりしているので、単調だと入っても見ていられる。まさかこういう映画で主役を張るとは予想外だった『サンキュー(for)・スモーキング』、『ダーク・ナイト』のアーロン・エッカートが、現場叩き上げの指揮官を熱演し、海兵隊宣伝映画としては十二分に役割を果たしている。

9/10/2011

探偵はBARにいる

探偵はBARにいる(☆☆★)

『相棒』・『ゴンゾウ』の古沢良太脚色、『相棒』・『臨場』の橋本一監督というテレ朝水曜枠で楽しませてくれている面々が手がける劇場用新作だというので、せっかくだからと思って東映東京撮影所のある大泉に足を運んだら、最大キャパシティのスクリーン1での上映。さすが東映製作・配給作品、気合が違う。この映画は、東直己の「ススキノ探偵シリーズ」を原作にしているんだそうだが、ごめん、読書家ではないので存在すら知らんかった。

札幌はススキノのバーを根城にしている腕利きとも思えないハードボイルド気取りの3枚目探偵に大泉洋、その相棒に松田龍平、主人公をかきまわすヒロインに小雪、その他、西田敏行、田口トモロヲ、高嶋政伸、竹下景子、石橋蓮司、などなどの出演。

まあ、昭和の感覚でいえば二本立ての1本っていう感じの商品だね。それはそれで悪くないと思うんだけど、するってーと本編の上映時間125分はちと長いんじゃないのかね。90~100分(TVの2時間枠で放送するドラマ相当)でまとまっていたら良かったのにな。

依頼人からの軽い仕事を引き受けたつもりの探偵が警告を受けるかのように半殺しの目にあったことから、頼まれてもいないのに真相を色々嗅ぎまわり、次第に過去の殺人にまつわる事件の全貌が明らかになっていくという筋立て。

映画を見ていて不思議に思ったのは、依頼人が主人公に依頼した幾つかの「仕事」そのものにあんまり必然性がないんじゃないかということ。映画を見る限りでは、依頼人にとって自明のことばかりで、探偵を使って「確認」する意味がないように思われる。

仮にそうだとすると、今度は、依頼人にとっては第三者を事件に巻き込み、真相を知ってもらうことに意義を感じていたという解釈も成り立つ。が、それならそれで、依頼人が探偵にろくに説明をするでもなく、思わせぶりに翻弄することの意味が無い。ま、もちろん、こういう話では、主人公を思わせぶりに翻弄する美女がいなけりゃはじまらないっちゃあ、はじまらない。ジャンル特有のお約束ということで納得するしかないかもね。

不思議といえば、主人公たちが、写真を引換に田口トモロヲから金をもらうシーンがあるんだが、あれはトモロヲからの依頼で写真とデータを誰かから取り戻したのだろうか。カネのため、生活のため、主人公自らこっそりああいう撮影して恐喝するようなダーティな仕事もしているという描写なんだろうか。いや、おそらく前者だとは思うんだけど、後者に見えなくもないんだよね。ここは誤解のない描き方をしないと、主人公のキャラクターに関わる問題だと思う。

大泉洋演じるキャラクターには全くそそられず。なんかうるさいし。無能だし。少しは腕っぷしがきくのかもしれないが、「探偵」としての有能さを感じられないんだよね。ただし、暴行・乱闘シーンにせよ、雪に埋められるシーンにせよ、体を張って演じているところには好感をもった。ススキノのローカル・ヒーローという設定からも、現時点で他の役者は考えにくいのはわかるので、他の誰かのほうが良かったとまでは云わない。役者はこれでいいから、このキャラクターについて、「やるときはやる、やればできる子」なのか、「意地と根性と人間味はあるけど、仕事については単にダメな子」なのか、はっきりさせたほうがいいだろう。

次から次へと妙ちきりんなキャラクターが登場するので、こういうのはレギュラー化して回を重ねたら面白くなる要素かと思う。パイロット版としては及第点、TVでもなんでもいいから続編を作って練りこんでいけばいいんじゃないのかな。あと、高島政伸がアラン・リックマンみたいに変装して悪役を演じていたのでびっくりした。この人、こういう役もやるんだね。