8/10/1998

Snake Eyes

スネーク・アイズ(☆☆)

ニュージャージー州のアトランティック・シティは古くからの観光都市だが、ギャンブルが合法化されており、立ち並ぶカジノで知られている。ここで行われていたボクシングの大きな試合中、一万四千人の観客の中で国防長官が暗殺される事件が発生する。折からの悪天候の中、閉ざされたアリーナの中で地元の警官と警備責任者による犯人探しが始まる。主演はニコラス・ケイジとゲイリー・シニーズ。デイヴィッド・コープ脚本、ブライアン・デパルマ監督。

前作『ミッション・インポッシブル』では、魂が入っているとまではいえなくとも、要所要所で息を飲むサスペンスと観客を翻弄する映像マジックを披露してくれた鬼才ブライアン・デパルマの新作である。

仕掛け的には大変面白い作品である。物語の舞台をアリーナと、そこにつながったカジノホテルの中に限定。およそ2時間の上映時間と、作品の中での時間の流れを概ね一致させているのである。リアルタイムで進行する映画というのは、あのヒッチコックも『ロープ』で試みていたように、過去に例がないわけではないのだが、やはり手法としては実験的といえる部類だろう。

映像も面白い。冒頭、いきなりどうやって撮影したのかとびっくりするような15分に及ぼうかいう臨場感たっぷりの長回し幕を開ける。本当に長回しなのかどうかは疑わしいのだが、とにかくこれが映像マジックという先制パンチだ。また、事件の瞬間を、様々な証言者の立場から幾度も違ったアングル、違った証言内容で映像化して見せ、観客を翻弄する。スプリット画面やら、監視カメラのマルチ映像やら、これでもかという持ちネタ総動員でお腹がいっぱいになる事請け合いである。

それにしても、内容は空疎だ。デ・パルマがどれほど魔術をかけようとも、ニコラス・ケイジがどれほどオーバーアクトで頑張ろうとも、どうにも盛り上がらないのは脚本のせいだろう。あまりにも早く正体を現す犯人。聞き飽きた動機。面白そうな設定、仕掛け、キャラクター、どれひとつ物語の中で活きてこない。全ては壮大な空騒ぎである。

デイヴィッド・コープは確かに売れっ子脚本家である。代表作は『ジュラシック・パーク』。デ・パルマとは、前作『ミッション・インポッシブル』で組んでいる。が、船頭多くしてとっちらかってしまった大作の脚本をそつなくかたちにするのが得意なだけの脚本家ではないか、と疑いの眼でかかったほうが良い名前だと思っている。要注意。

坂本龍一が音楽を担当しているが、なぜ坂本だったのか、いまだに良くわからない。ピノ・ドナジオ風に書いてみましたといった感じは特に面白くもなかった。(1998/8)

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