9/10/2011

探偵はBARにいる

探偵はBARにいる(☆☆★)

『相棒』・『ゴンゾウ』の古沢良太脚色、『相棒』・『臨場』の橋本一監督というテレ朝水曜枠で楽しませてくれている面々が手がける劇場用新作だというので、せっかくだからと思って東映東京撮影所のある大泉に足を運んだら、最大キャパシティのスクリーン1での上映。さすが東映製作・配給作品、気合が違う。この映画は、東直己の「ススキノ探偵シリーズ」を原作にしているんだそうだが、ごめん、読書家ではないので存在すら知らんかった。

札幌はススキノのバーを根城にしている腕利きとも思えないハードボイルド気取りの3枚目探偵に大泉洋、その相棒に松田龍平、主人公をかきまわすヒロインに小雪、その他、西田敏行、田口トモロヲ、高嶋政伸、竹下景子、石橋蓮司、などなどの出演。

まあ、昭和の感覚でいえば二本立ての1本っていう感じの商品だね。それはそれで悪くないと思うんだけど、するってーと本編の上映時間125分はちと長いんじゃないのかね。90~100分(TVの2時間枠で放送するドラマ相当)でまとまっていたら良かったのにな。

依頼人からの軽い仕事を引き受けたつもりの探偵が警告を受けるかのように半殺しの目にあったことから、頼まれてもいないのに真相を色々嗅ぎまわり、次第に過去の殺人にまつわる事件の全貌が明らかになっていくという筋立て。

映画を見ていて不思議に思ったのは、依頼人が主人公に依頼した幾つかの「仕事」そのものにあんまり必然性がないんじゃないかということ。映画を見る限りでは、依頼人にとって自明のことばかりで、探偵を使って「確認」する意味がないように思われる。

仮にそうだとすると、今度は、依頼人にとっては第三者を事件に巻き込み、真相を知ってもらうことに意義を感じていたという解釈も成り立つ。が、それならそれで、依頼人が探偵にろくに説明をするでもなく、思わせぶりに翻弄することの意味が無い。ま、もちろん、こういう話では、主人公を思わせぶりに翻弄する美女がいなけりゃはじまらないっちゃあ、はじまらない。ジャンル特有のお約束ということで納得するしかないかもね。

不思議といえば、主人公たちが、写真を引換に田口トモロヲから金をもらうシーンがあるんだが、あれはトモロヲからの依頼で写真とデータを誰かから取り戻したのだろうか。カネのため、生活のため、主人公自らこっそりああいう撮影して恐喝するようなダーティな仕事もしているという描写なんだろうか。いや、おそらく前者だとは思うんだけど、後者に見えなくもないんだよね。ここは誤解のない描き方をしないと、主人公のキャラクターに関わる問題だと思う。

大泉洋演じるキャラクターには全くそそられず。なんかうるさいし。無能だし。少しは腕っぷしがきくのかもしれないが、「探偵」としての有能さを感じられないんだよね。ただし、暴行・乱闘シーンにせよ、雪に埋められるシーンにせよ、体を張って演じているところには好感をもった。ススキノのローカル・ヒーローという設定からも、現時点で他の役者は考えにくいのはわかるので、他の誰かのほうが良かったとまでは云わない。役者はこれでいいから、このキャラクターについて、「やるときはやる、やればできる子」なのか、「意地と根性と人間味はあるけど、仕事については単にダメな子」なのか、はっきりさせたほうがいいだろう。

次から次へと妙ちきりんなキャラクターが登場するので、こういうのはレギュラー化して回を重ねたら面白くなる要素かと思う。パイロット版としては及第点、TVでもなんでもいいから続編を作って練りこんでいけばいいんじゃないのかな。あと、高島政伸がアラン・リックマンみたいに変装して悪役を演じていたのでびっくりした。この人、こういう役もやるんだね。

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