7/19/2008

Speed Racer

スピードレーサー(☆☆☆★)

『インベージョン』の撮り直しを請け負ってジョエル・シルバーに媚を売ったアンディ&ラリー・ウォシャウスキーが、ご褒美に撮らせてもらった狂気の無駄遣いは、「マッハGo Go Go!」ぶりの徹底加減に唖然とし、その突き抜け具合に感動する、原色溢れる壮絶な怪作である。

とにかく、宣伝の方向性を完全に誤っている。

" 「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟が描く、 革新のスピード世界!" じゃないだろ。

" あの伝説のタツノコ・アニメ、「マッハGo Go Go!」を完全再現!ハリウッドが本気で挑む、超絶の映像体験!" でしょ。

そうしたら、かつてTVの前で胸を熱くした世代(って相当上なんだけど)の観客が劇場にかけつけ、もうちっといい商売が出来たに違いないのだ。場内、それほど悲惨な客の入り。これを大劇場でみる機会がありながら、本来この作品を楽しめるはずの観客はどこにいったのやら。もったいない。

宣伝が誤っているから、この作品に対する批判もみんな筋違いで的外れだ。レースシーンがアニメかゲームのようだって?当たり前じゃないか、アニメを再現しているんだから。実写映画じゃなくて、実写マンガなんだよ。だから、わざとテカテカなんだよ。ガキがうるさい?サルが鬱陶しい?しょーがないじゃないか、あーいうのが出てくるのが子供向けアニメのお約束だったんだから。視聴者が一番感情移入できるキャラなんだよ。お話しが子供向けで幼稚だって?だって、それを変えてしまったら「マッハGo Go Go!」じゃなくなっちゃうだろ!

実写映画である以前に「実写マンガ」とでもいうべき作品において、同じく実写マンガの先達である『フリントストーン』に引き続きカートゥーン・キャラクターを演じる巨漢ジョン・グッドマンのアニメ的な存在感や、実写映画ではなかなか仕事に恵まれないらしいギョロ目・巨乳・低身長の個性派クリスティーナ・リッチの想像を超えるアニメぶりは特筆に値するだろう。真面目な映画専門かと思われたスーザン・サランドンの(これまた)ギョロ目も、実はとても漫画的だったことに気付かされる。本作では『イントゥ・ザ・ワイルド』で評判のエミール・ハーシュにすら、全く2次元的で何の奥行きもないアニメキャラになることを強要し成功しているが、日本から参加の真田広之の演技は「マンガ」になっておらず、登場シーンが少ないのも納得である。韓国から傘下のピとかいうひとも無駄に気合が入っていて落第点。

エンドクレジットで流される楽曲に、あらなつかしや、あのテーマ曲がミックスされているところは感嘆ものである。ぜひドでかい画面とぶっ飛びの音響で体感すべき。「マッハGo Go Go!」をいまやるのであれば、これ以上のものはないと断言できよう。もちろん、なぜ、いま「マッハGo Go Go!」をやる必然性があるかといえば、技術的に可能だからということと、作り手にとって愛着がある作品だから、という以外に理由はないが、成功し、力や後ろ盾を得て、自分が大好きな作品を題材にとりあげることができるクリエイターたちの幸せ、祝祭気分を共有できるのもまた、幸せというものじゃないだろうか。

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