1/09/2010

Julie & Julia

ジュリー&ジュリア(☆☆☆)

米国ではTV出演や著作であるフランス料理本で有名なジュリア・チャイルズの全レシピを、現代の女性が1年間で制覇するさまをつづった blog を原案にして脚色、外交官の夫人であったジュリア・チャイルズその人が、フランス滞在中に料理を学び、本 ("Mastering Arts of French Cooking" 1961年刊)を出版するまでのストーリーと折衷しての映画化である。ネタに詰まって blog 頼りなのは、太平洋のこちらも向こうもさして違いがないところ。(米国メジャーの作品では本作が最初のBlog映画になるらしい。)

本作を手がけたのは、2000年代に入って製作ペースと評判を大きく落としたかつての人気脚本家・監督のノーラ・エフロンである。脚本家としてはともかく、監督した90年代のヒット作はさして面白いと思っていなかったので、そもそも監督としては過大評価気味だったと思っている。本作は4年ぶりとなる作品なのだが、こちらの先入観を覆すというのか、ここのところの不調が嘘だったかのように面白いのだ。彼女の監督作品では一番いいかもしれない、とさえ思う。

まあ、本作の面白さは、メリル・ストリープが「再現」するジュリア・チャイルズのパートによるものだ。エピソードが面白いし、メリル・ストリープの成りきり演技が見物である。賞取りにいくにはいささか軽い映画が多いとはいえ、ここのところのメリル・ストリープは作品にも役にもめぐまれていると思う。

それに比べ、主人公であるはずの女性のパートは、ドラマとして成立していない。この作品がもし、(たまたまメリル・ストリープも出演していた)『めぐり合う時間たち』的、つまり、ひとつの共通アイテムを巡って、複数の世代にまたがるドラマを展開することを狙った野心的な作品であれば、これは映画の根幹に関わる問題になるのだが、作り手もそんなことは承知しているかのように気負いのない作り。ジュリア・チャイルズのエピソードを語る「つなぎ」として機能すれば十分という読みがあったとしたら、それは賢い判断だといえよう。もちろん、演じるエイミー・アダムズのキュートさが全てを帳消しにすることも計算の上に違いあるまい。

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