4/16/2011

Cannonball Wedlock (婚前特急)

婚前特急 (☆☆★)


一癖もふた癖ある男女がひと悶着起こしたりいがみ合ったりしながら、気がついてみたら互いに惹かれあっていく、という類の映画はハリウッドの大定番であって、当方も昔から好物にしているものだから、和製スクリューボール・コメディだという本作の評判を聞きつけて、とりあえず観る気をそそられた。

同時に5人の彼氏をとっかえひっかえしながらお気楽に恋愛を楽しんでいる主人公が、友人の結婚を機に彼氏の査定と整理をしようとして始まるお話しである。普通のスクリューボール・コメディだと、観客にとってカップルになる主演の男女は自明なのだが、、映画が始まった時点では、(実際のところ、映画がある程度進んでいくまでは)主演女優と対になる相手が誰なのか、明確に示されない点で、変化球である。しかし、スクリューボールの変化球、というのも馬から落ちて落馬したみたいな話だな。

で、その変化球の部分が本作の面白いところではある、と思う。なにせ、「相手役」ってのが、通常のロマンティック・コメディでは絶対に相手役にならないようなキャラクターなので、本当にそういう方向に話が転がっていくのかどうか、懐疑的になりながら観るというのもスリリングだし、それがもたらす「すっとぼけ」な感じも本作の面白いところだ。

でも、ちょっとテンポがのろいんだなぁ。それに、話の帰結には唐突感がある。「イヤな」ヒロインの表面には見えていなかった魅力や、そういう「イヤ」な行動をとってしまう理由なんかも踏まえながら、「人間」としての成長が描けていたら違っていただろう。相手の男もそうだ。いろいろ揺れる複雑な気持ちみたいな部分がそっくり欠如しているので、なんで突然ヒロインになびくのか、さっぱり理解できない。

こういう展開なら、ヒロインはハートブレイクなままで終わったほうが自然だ。つまり、いやな女なんだから、その代償は払うべきである。男はお嬢さんに惚れたまま結ばれてハッピーエンド、にするほうが自然だ。その上で、ヒロインの気持ちを察したお嬢さんは自分に夢中で周りの見えていない男を諭してヒロインを慰めにいかせ、ヒロインは自分の非を認めて新たな出人生に向かい合っていく、、というエンディングになるんじゃないのだろうか。

評判では吉高由里子がいいっていうのだけれど、正直、それはちょっとどうなんだろうか。演技が硬いし、鼻にかかったい歩本調子の声も魅力がない。フィジカルに良い動きを見せているシーンもあるから、コメディエンヌとしての将来性までは否定しないけれど、本作レベルで褒め倒すのは違うだろう。本作の脚本が描ききれていない、「イヤ」な女の裏側にある本当の魅力を演技でカバーして見せろっていうのも荷が重いのだとは思うが、それができちゃうのがスターってもんだろう。なんか、小動物がくるくる動いてるから可愛い、っていうレベルではちょっとなぁ。

一方、浜野謙太はすごい。何だ、この存在感と自然体は。和製ザック・ガリフィアナキスになれるんじゃないのか?衝撃的に面白いのだが、ミュージシャンが本業っていうからまたびっくりだ。

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