8/27/2011

Reign of Assasins 剣雨

レイン・オブ・アサシン(☆☆☆)


ジョン・ウーの新作と喧伝された本作だが、あんまり盛り上がっていない。よくよく聞いてみれば、脚本・監督はスー・チャオピン。ジョン・ウーは製作。ただ、共同監督のクレジットで監修やアクションの撮り方の指南をした作品なのだそうだ。(実際に演出したのは娘が登場するシーンだけだとか。)主演のミシェル・ヨーがワイヤーで宙を舞い、剣がしなる武侠アクションだ。共演は韓国から、チョン・ウソン。

舞台は明の時代の中国。手に入れたものが強大な力を得ると云われる「達磨大師」の骸の強奪をめぐり暗躍する影の暗殺集団。そして、その組織を抜けた凄腕の女剣客。女剣客は過去を捨て、顔まで変えて、市井で静かに生きる道を望んだが、彼女に恨みを持つものや、達磨の亡骸を捜す組織配下のものたちがそれを許さない。彼女の正体を見破った暗殺者たちが身辺に迫る。

自らが大切にするものを守るため、一度は封印した剣を握り、望まない闘いに再び身を投じていくことになるヒロイン。そして、自らの暗い情念と慾望を満たすために配下の暗殺者集団を動かす悪の頭領。そこにヒロインに対する個人的な恨みをもったものや、ヒロインの後釜を埋めた勝気な女刺客、武術だけでなく奇術にも通じた男など、個性豊かな剣客たちも絡む。愛のためその身を捨てて血路を開く、クライマックスの大アクションは、さすがにただのアクションに終わらず、エモーショナルである。

主人公の女剣客は、最初は台湾のケリー・リンが演じているが、「整形」によって「ミシェル・ヨー」になる。そんな事情もあって、ミシェル・ヨーになる前のパートにはあまり時間を割きたくなかったのかもしれない。本来であれば、冒頭に置かれた達磨大師強奪のエピソードはもっと大々的に描かれても良いと思うが、ストップモーションなどを使ったキャラクター紹介程度の扱いになっていて少し残念だ。また、彼女が過去を捨てるきっかけとなる出会いには、もうすこし説得力が欲しい。

ミシェル・ヨーは、年を重ねてもなお素晴らしいアクションを見せてくれるのだが、それ以上に、ドラマを演じられる素晴らしい女優でもある。本作の中盤で、冴えない男を演じているチョン・ウソンと関係を深め、夫婦として平凡な生活を送ろうとするシークエンスで彼女が醸しだす佇まいが素晴らしい。「アクション」を期待した観客にとっては、思ったより長い中だるみに思うかもしれないが、それを踏まえるからこそ、クライマックスが盛り上がるのである。

アクションシーンの振り付けは流れるダンスのごとく美しく、素早く、力強い。監修とはいえ、そのあたりにジョン・ウー的なセンスが感じられる。主人公の使う剣術は、剣がしなって相手の急所を突くというもので、これがビジュアル的にも面白い。ライバル的に登場するバービー・スー演じる女剣客はとても面白いキャラクターなのだが、これからというところであっさり退場させられてしまい少々もったいなかったかもしれない。

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