11/05/1999

The Bone Collector

ボーン・コレクター(☆☆☆★)

NYを舞台に、怪奇で残虐な連続殺人事件が発生する。犠牲者から骨の一部を摘出し、残忍な方法で殺していく犯人は、捜査陣との知恵比べを楽しむかのように現場に様々な証拠やメッセージを残していく。この事件に立ち向かうのは、仕事上の事故で身体のほとんどを動かすことが出来なくなった現場検証の大ベテランと、彼の目となり手足となるために抜擢された若い女性警官だ。このコンビを演じるのがデンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリー。監督はフィリップ・ノイス。

アンジェリーナ・ジョリーはジョディ・フォスターではないし、フィリップ・ノイスはジョナサン・デミには程遠い。だから、この映画は『羊たちの沈黙』レベルの作品にはなっていない。しかし、『羊たちの沈黙』以降、山のようにつくられてきたサイコ・スリラーのなかでは、結構楽しめる部類の作品といっていい。ジャンルを再定義するような傑作ではないが、力のこもった好編だと思う。

映画のストーリーそのものにはそれほど新味があるわけではない。牢獄の中のレクターからヒントをもらって事件に立ち向かうクラリスという構図が、ベッドの上で寝たきりのデンゼルの手足となって凄惨な現場に踏み込むアンジェリーナに容易に重なって見えるし、凝った殺人法は『セブン』などを思い出させる。あくまで、もはや定番となったサイコ・キラーものである。もしこの犯人を精神異常者というカテゴリーに含めることが出来るのなら、の話だが。

決まりきった話だからこそ、見せ方がモノを言う。例えば、映画の始めの方で、アンジェリーナ演じる警官が通報を受け、最初の死体を発見する。ここでなんの用意もない彼女が証拠確保のために効かせた機転。それ自体がプロの仕事ぶり感じさせるのもあるし、巧みなキャラクター紹介にもなっている。サスペンスを盛り上げる組み立て方もいい。謎が解けてみれば、なんだ、その程度のことかとガッカリしてしまうのだが、そこに至るまでのプロセスで上手に観客の気分を盛り上げていく。一般にはぬるい監督と思われているフィリップ・ノイスだが、大型の娯楽アクション作品は今ひとつでも、こういうサスペンス・スリラーを撮らせると活き活きとするものだ。

ところで、この映画、それよりも何よりも、「スター・メイキング」の1本という意味で見逃せない。

アンジェリーナ・ジョリーは、昨年、TV映画『Gia』で評判をとって、そのあと急に出演作品が増えている新進スターである。ジョン・ボイドの娘、という出自も、そのセクシーな口元も目を引くのだけれど、いやはやどうして、ここでの彼女、凛と背筋を伸ばした姿の格好良さ。彼女の颯爽とした演技をみていると、これがスター誕生の瞬間なのだと確信する。この後出演作が次々公開される、絶対注目すべき女優だろう。

そんな彼女の引き立て役に回っているのがデンゼル・ワシントンである。首から上だけしか使えない難役ながら、若いスター誕生に貢献している。その看護人を演じたのが立派な体躯のクイーン・ラティファーだが、これまた、そのキャラクターの扱いがひどいと思わせるほどの好演を見せている。やっぱり役者がいいと映画が締まる。また、音楽もいい。クレイグ・アームストロングが堂々たるスコアを書いていて、感心した。この人、こういう仕事もできるのか。

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