6/14/2008

Indeana Jones and the Kingdom of Crystal Skull

インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国(☆☆☆★)

冷戦下、超能力研究も進めるソビエト連邦は、神秘の力を持つと考えられるクリスタル・スカルを追い、ロズウェル事件の調査にも関わったインディアナ・ジョーンズ博士に協力を強要する。すんでのところを脱出したインディは拉致された旧友が残した手がかりをもとに、黄金都市の謎に迫っていく。現実で経過したした時間にあわせ、50年代に設定と舞台を移したシリーズ復活作は、50年代の冒険活劇として王道の記号を散りばめてみせる。ナチスに変わるのはソビエト連邦であり、超自然的オカルトアイテムにもUFOとリトル・グレイの影がちらつく。人間が作り出したとてつもない破壊力の象徴は、ネバダの実験場で炸裂する核爆弾だ。してみると、クライマックスではそれを凌ぐオカルト・パワーが炸裂することは、むしろ必然。そのこと自体には全く抵抗がないのだけれど、どうも世間の受けは良くないようで。


そもそもスティーヴン・スピルバーグが志向するオールド・ファッションな冒険活劇と、ジョージ・ルーカスがこだわった50年代B級SFi 風味が噛み合っていない、という指摘は、スピルバーグが最後までその展開に乗り気しなかったという事実を暴露されたといっても、あまり意味がないことのように思われる。だいたい、このシリーズは人知を超えたオカルトをネタとしてきたわけで、今回の事件もその範疇を超えてはいないのではないか。ただ、かつての3部作は、人知を超える力の「源」までは言及することなく曖昧にしてきたから、それを見せてしまう今回は少し無粋だとは思う。


とにもかくにも、懐かしい音楽に乗って、懐かしいヒーローが銀幕に戻ってくるのだから、とやかく言わず楽しむのが吉、という文脈でしか評価されない宿命にある一本だろう。ちょうど、北米版で出揃ったDVD版『ヤング・インディアナ・ジョーンズ』シリーズを見ていたところだったので、「妙にお堅くて遊び心にかける件のシリーズと比べれば、観客が求めているインディはこうでなくちゃなぁ」と思って、素直に喜んでしまった私なぞは得をした気分である。これは、やはりそういう観客にむけた同窓会的お祭り映画なんだろう。出演できない俳優たちをいろいろな工夫で登場願っているあたり、正しい配慮だ思う。今回登場しなかったキャラクターは、ぜひ次回作で。やるんでしょ?どうせ。


なんだかんだといって肯定論者の当方ではあるが、数多くの一流どころの手を経てデイヴィッド・コープの手で整理整頓された脚本は、文字通り、さまざまな脚本家が残した断片をつなぎ合わせた印象であることには違いがない。スピルバーグの手腕と相まってその場の刺激や興奮を作り上げることには成功しているが、いろいろな要素が有機的に絡み合ってこないから、残念ながら、物語としての面白さには欠けている。背負ってしまった「看板」の重さやそれぞれに我の強いステイクホルダーのことを思えば、こういう脚本にならざるを得ないのは理解できるが、これでは、何人ものスクリプト・ドクターの手を借りて完成される無個性な大作映画とかわらない。まあ、自身の監督作はともかく、脚本家としてのデイヴィッド・コープの得意なことって、まさにこういう状況でのツギハギ仕事にあるわけで、空中分解しかけたプロジェクトをゆだねる相手として、彼の起用は正しい判断のかもしれぬ。


スピルバーグの演出は、相変わらず幼稚で悪趣味で、下手な誰かが取ったら面白くもなんともないようなアクション・シークエンスをスリル満点ユーモアたっぷりのジェットコースターライドに変えてしまうのだから恐れ入る。もともと雇われ仕事の気楽さで始めたこのシリーズ、今回もよい息抜きになったのではないか。今回は撮影の担当が、さすがに高齢で引退済のダグラス・スローカムに変わって、近年の盟友であるところのヤヌス・カミンスキーに変わっているのだが、スピルバーグと組むと暗く重たいカミンスキーも自らのタッチを封印、スローカムが作った明るくコミックっぽいルックスに近づけようと最大限の努力をしているというのが伝わってくるところが可笑しい。

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