10/17/2009

The Proposal

あなたは私の婿になる(☆☆☆)

カナダ国籍のやり手女性編集者が、VISA手続きの不手際から国外追放を食らいそうになり、その回避手段として、過去3年彼女の下で耐えてきた若いアシスタントとの偽装結婚を思いつき、男も出世のためと渋々ながら承知する。ところが、そんな嘘を簡単に受け入れる移民局ではなかったから大変。舞台をNYからアラスカに移し、男の家族を巻き込んだ騒ぎに発展していく。いがみあう男女が、突拍子もない出来事をきっかけに、互いの違う側面に気づいて惹かれあうようになっていく、というのはロマンティック・コメディにおける絶対的な定番の一パターンだ。しかし、それを年上で実績のある「女優」が牽引し、アラスカという少し目新しい場所を選び出した目利きがこの作品の新鮮味につながっている。

考えてみれば、2005年の『デンジャラス・ビューティ2』以来、久しぶりにコメディに戻ってきたサンドラ・ブロックである。共演は見慣れない顔だと思っていたら、『ウルヴァリン』でウェイド・ウィルソン=デッドプールを演じていたライアン・レイノルズである。サンドラ・ブロックが1964年生まれ、ライアン・レイノルズが1976年生まれというから、丁度一回りも年が離れているし、映画界での実績もまたしかり。近年、こういう企画もたまに見受けられるようになったとはいえ、やはり珍しい部類といえるのではないか。昔から裏方にも積極的に関わってきたサンドラ・ブロック、今回もしっかりと製作総指揮に名を連ね、今の年齢の、今の彼女が輝く企画に仕立て上げるのに成功している。監督の人選もいい。『幸せになるための27のドレス』をヒットさせた、このジャンル期待の星、アン・フレッチャーだもの。

「部下を振り回す嫌われ上司」像には、『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープが重なり、偽装結婚から始まるロマンスといえば、ピータ・ウィアーの『グリーン・カード』なども思い出す。男の実家で家族や親戚と関係を深めることで抜き差しならない状況になっていく展開は、昏睡男のフィアンセと勘違いされたサンドラ自身のヒット作『あなたの寝ている間に』、だろう。ことほどさよう、ひとつひとつのアイディアにオリジナリティがあるとはいい難い。それでも、テンポよく繰り出される台詞は良く書けているし、なんだかんだといいながら3年間も一緒に働いてきた上司・部下の間の空気が変わっていく感覚を、主演のこの二人、なかなか良く醸し出している。自己中心的な凄腕上司、というのがサンドラ・ブロックのキャラクターではないのは先刻ご承知、思い通りにならないシチュエーションで困惑する彼女を見ていると、観客の期待する自分というのがどのあたりにあるのかを分かった人の仕事だというのが分かるだろう。

故郷の町にすむ男の元彼女を、『ベストフレンズ・ウェディング』のころのキャメロン・ディアスを思わせないでもないマリン・エイカーマンが演じている。この人、同じ監督の『~27のドレス』で、主人公の(嫌な)妹役を演じていて、注目株。今回も何かしでかすかと期待してみていたのだが、このキャラクターを添え物としてしか扱えない脚本は、ちょっともったいない。ほら、普通、こういう女は嫉妬心丸出しで主人公らの間に割って入ってくるものだし、偽装結婚という真実を真っ先に暴き出したりするものなんじゃないのかね。主人公が真実を暴露して身を引こうとする理由が「家族」でもいいけれど、若くて可愛い女がいてもいい。

付け加えて、邦題。語呂とインパクトで「婿」なんだと思うが、本来「娘の配偶者の男性」が婿なのだから、家制度も関係なければ、女性側の親が存在しない物語で「婿」っていうのはちょっと違う感じがする。

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