9/04/1998

Knock Off

ノック・オフ(☆)

舞台は中国返還を控えた1997、香港。ファッションデザイナーで実業家の主人公が、CIAとロシアン・マフィアとの対決に巻き込まれてしまう。主演、ジャン・クロード・ヴァンダム。監督は同じくヴァンダム主演の『ダブル・チーム(1997)』に引き続き、本作がハリウッド進出第2作となるツイ・ハーク。

さて。ヴァンダムといえば香港映画界からハリウッド進出への足がかりをつくろうとする監督たちの踏み台として使われてきたのはご存知のとおり。マーシャルアーツ的な体技ができるアクション俳優であること、金をかけずに量産されている手軽な軽量娯楽映画の主演俳優であることなどが、それに向いているということなのだろう。

記憶をたどれば、まず、サム・ライミが製作し、ジョン・ウーが監督した『ハード・ターゲット』があり、リンゴ・ラムが監督した『マキシマム・リスク』があった。これらの作品は、監督のベストとは言い難いが、「ヴァンダム映画」としては割と面白く見られる作品になっていたんじゃないか。

そこで、ツイ・ハークの前作『ダブル・チーム』があった。NBAのビッグスター、デニス・ロッドマンが出演し、悪役にミッキー・ロークというやつだ。これが面白くなくてな。デニス・ロッドマンへの遠慮だったんだろうか。

そういう意味では、雪辱戦、といっても良いのが本作である。脚本には『ダイ・ハード』にも参加していたスティーブン・E・デスーザも名を連ね、これで面白くなるんじゃないかと期待して映画館に向かうわけだが、いやはや。これは辛い。これ、香港方式で脚本なんかないままなんとなく作っちゃったんじゃなんじゃないのか?舞台も香港だし。

小型爆弾をアメリカに輸出しようとしているロシアのテロリスト、阻止しようとしているCIA、香港の警察、謎の女、香港名物のぱちもの(=Knock Off) 輸出業者などと、いろいろな要素が突っ込まれているが、なんだか交通整理が出来ていない。仕掛け作りに凝ったのはよいが、明確な敵がなかなかわからないので、単純なアクション映画という意味では盛り上がらない。

そもそもヴァンダムが実業家っていうのが何かの間違いだったんじゃないか。また、コメディリリーフとしてロブ・シュナイダーが出演しているのだが、この2人、全く息が合っていないし、演出もコメディに振りたいのか、どっちにもっていきたいのか良く分からないのでスッキリしない。

アクション・シークエンスは良く組みたてられている。歯切れの良い編集も心地よい。が、ヴァンダムに老化現象が見られるような気がしてならない。体の動きやアクションの切れは、撮影や編集にも助けられて、大きく見劣りするほどでもないのだけれど、顔は明らかにふけてきているんじゃないか。90年代初期に比べると美しさに陰りがみられ、スターとしての輝きが失われつつある。噂されるドラッグの影響なのかと勘ぐりたくもなる。

ハリウッド進出作が2本連続で煮ても焼いても食えない出来栄えとなってしまったツイ・ハーク。ツイ・ハークはこのままヴァンダムともにキャリアを終えるつもりでなければ、何か新しい打開策を考える必要があるのではないか。全盛期には、そのスタイルがもっともアメリカ進出に向いているように思われた彼が、なぜにこんな苦戦を強いられているのかが結構不思議である。

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