9/11/1998

Rounders

ラウンダーズ(☆☆☆★)、

ポーカーの才能に恵まれ、NYのアンダーグラウンドでそれを生業としていた主人公が、ある日大博打で全財産を失い、一度はギャンブルの世界から足を洗う。ガールフレンドの勧めもあり以前から始めていた法律の勉強に打ち込もうとするが、刑務所上がりの悪友や、ポーカーの魅力そのものに抵抗しがたく、やがて危険な世界に再び足を踏み入れていく。これは、そんな裏街道の青春映画である。

『アンフォゲッタブル』で知られる、ジョン・ダール監督の最新作。主演は作品にも恵まれて人気・実力ともにトップクラス入りを果たしつつあるマット・デイモン。共演にこれまた若手実力派で曲者のエドワード・ノートンを配し、ベテラン俳優であるジョン・マルコヴィッチ、マーティン・ランドー、ジョン・タトゥーロが脇を固めるというなかなか魅力的なキャスティングの映画である。

マット・デイモンはギャンブルという「裏」の世界を舞台にしても、チンピラ風の安っぽさがなく、穢れたところを感じさせない個性がある。しかし、見方によってはふてぶてしくもある顔の作りが、意外や、「エリート街道を驀進する優等生」より、「汗をかき、喧嘩もする労働者階級系」のキャラクターに合うところが面白い。

そんな彼と、共演のエドワード・ノートンという組み合わせがなかなか刺激的なのである。ノートンが演じるのは主人公の悪友役で、「憎めないダメ男」として、主人公が泥沼にハマる要因をつくっていく。これはなかなかの難役で、作品ごとに全く違った顔を見せる演技派ノートンが愛嬌たっぷりに演ずるからたまらない。これがただのダメ男であれば、主人公の行動に説得力が生まれないわけで、今回はノートンの大芝居あっての作品、ということもできる。

能天気な明るさはないがユーモラスなシーンにあふれ、陰気な湿っぽさもないが厳しい現実も垣間見せる絶妙のバランス感覚にあふれた脚本。大物俳優たちの余裕たっぷりの怪演を上手にさばきながら、ほろ苦さのある渋い青春映画としての筋を通した演出、そこに貫かれた独特の美意識とスタイル。カラックス作品の撮影で知られるジャン=イヴ・エスコフィエの創りだす映像が雰囲気たっぷりで、見応え充分。この映画、なかなかのものだ。拾い物としてオススメしたい1本である。

もう一つオススメといえば、主人公の恋人を演じたグレチェン・モルがなかなかいい感じである、ということ。物語的には、彼女の魅力を持ってしても主人公を表世界に繋ぎ止めておくことができない、というところが、哀しいところでもあり、主人公の意志の強さを感じさせる部分でもある。そういう意味で、出演時間的には小さい役ながら、主人公の運命の分かれ目を象徴する美味しい役どころでもあった。この人の醸し出す雰囲気が好きなので、今後の活躍に期待しておくことにしたい。

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