9/21/1998

Your Friend and Neighbors

僕らのセックス、隣の愛人(☆★)

しかし、この作品を覆い尽くした陰鬱な空気はいったいなんだというのだろう。ハッピーなカップルにはこの映画を勧めることが出来ないし、崩壊しかけのカップルには余計勧められない困った作品である。まあ、ひとりで劇場に出かけ、他人事として楽しむか、自分のこととして考え込むことになるのか。批評家受けが良いと聞いたが、どうもノれない。

お互いが友人同士である3人の男とその妻たちを中心に、不倫や浮気をきっかけとしてカップル、人間関係、信頼関係が崩壊していく物語である。

世の中をペシミスティックに見ているというのでもない。ただただ後向きで救いがない。現代社会に活きる我々は、男女関係についてここまでの困難を抱えているといいたいのだろうか。それとも、ニューヨーカーに対する自虐も入った当てつけだったりするんだろうか。ニール・ラビュート脚本・監督による2作目だというが、前作は見ていない。監督と親しいらしい、ジェイソン・パトリックが共同プロデューサーに名を連ね出演することで本作の製作をサポートしているようだ。ナスターシャ・キンスキーやベン・スティラー、アーロン・エッカート、キャスリン・キーナーらが出演している。

本作の狙いは、セックスがきっかけでもつれていく男女関係をブラックコメディのタッチでつづることにあるようである。コメディの体裁をとってはいるけど、「笑えないコメディ」の類である。セックス絡みの会話や露骨なシーンも、笑いを運ぶというよりは気が滅入り、かといって当然エロティックに楽しめるわけでもない。物語にしても、ハリウッド流のハッピーエンディングで幕を閉じるわけではない。

まあ、それもいいさ。ハリウッド流ばかりが米映画ではない。インディペンデントからはこういう作家性の強い作品が出てくるところも米映画の裾野の広さである。しかし、それで面白いなら良いが、本作についていえば退屈なだけである。

役者は一応才人ぞろいである。TVスポットを見て、そのキャストに興味を惹かれて劇場に足を運んだくらいである。友人関係なのか、この種の作品にしては豪華といってもいい。

『スピード2』と『スリーパーズ』という2本のビッグバジェット映画でとことん「スター」としての可能性をフイにしたジェイソン・パトリックが、こういう作品のなかで癖の強い役を演じて人が変わったようにイキイキしている。「生涯最高のセックス」として実に吐き気をもよおす告白をするシーンが見ものだろうか。あとは、最近、『メリーに首ったけ』の大ヒットでその存在を広く認識させたベン・スティラー、なんと久しぶりのナスターシャ・キンスキーあたりが目玉となるキャスト。それより地味なところで、アーロン・エッカート、キャスリーン・キーナーが好演していて、登場人物の心理状態というのはよく伝わってくる。まあ、それだけに、コメディよりもシリアスなムードが先行してしまうのかもしれないが。

デビューまもない新進作家の気負いはわかるが、どちらかというと迷惑な感じの1本、としておくことにする。

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