1/08/1999

A Civil Action

シビル・アクション(☆☆☆★)

敏腕の弁護士が、ある工場が廃棄した化学物質によって生活水が汚染されたとして、マサチューセッツ州の小さな町の住人が起こした集団民事訴訟を手がけた顛末を描くノンフィクション小説の映画化で、『シンドラーのリスト』の脚本で知られるスティーブン・ザイリアンが脚色し、自ら監督を手掛けている。

主演の弁護士役にジョン・トラボルタ、同僚にウィリアムHメイシーら、また企業側の老獪な弁護士にロバート・デュバルを配した実力重視のキャスティング。訴えられた2つの巨大企業を始めとして、全てが実名で登場しているという。

そんなわけで、「アクション」つってもアクション映画ではなく、環境問題を扱った裁判ものである。原題は「集団民事訴訟」のことだな。そう聞いて想像されるのは、貧乏な民権派弁護士が、頭の着れる貪欲な企業側の弁護士を打ちのめしてハッピーエンドというような、娯楽裁判映画の典型だろうか。しかし、この映画、そんな想像を見事にはずしてくれる。

主人公は有能な弁護士で、彼の小さい事務所は裁判に持ち込む前に訴訟相手の企業からよい条件での示談を引出すことで大きな成功を収めている。表向きはともかく、金のある企業を標的に金を毟り取ることができるかどうか、それが全てというようなものだ。恰幅のよいトラボルタが高価なスーツに身を包み、ポルシェを走らせる。その姿は、そしてその姿勢は、ある種、悪役っぽくすらある。

その彼が、あるきっかけから件の集団訴訟を手がけることになる。これが思うようにことが進まない。彼が人情にほだされ、勝ちにこだわり始めると同時に敵側の老獪な戦術にはまり、ドツボにはまっていくというほろ苦い展開が待っている。主人公と、その仲間たちは破綻の瀬戸際に追いつめられる。”Justice has its price” それが宣伝用のタグだ。

実話だからいい、フィクションだからダメという区別をするつもりはないのだが、やはり一方で、こういう「実話」が転がっているアメリカという国は面白い、と思う。
 
この映画、話が面白いだけではない。これはまた、「役者」の映画でもあるのだ。善とも悪とも判別しないグレイなエリアで法律を職としている人々を、なかなか面白いアンサンブルキャストで魅せる。もちろんトラボルタを支えるウィリアムH・メイシーの金策ぶりも良いのだけれど、圧巻は企業側を代表する弁護士を演じるロバート・デュバルだ。

裏も表も知り尽くした大ベテランで、むしろ誠実そうにすら見えるこのデュバルの演じる男。事件にのめりこんで次第に熱くなるトラボルタの方と違い、冷静で、客観的であり、老獪を絵に書いたような戦術を用いる。これをユーモアたっぷりにとぼけた演技で見せるさまは本作一番の見世物であろう。

実話を脚色させてナンバーワンの名手、スティーブン・ザイリアンの脚本と演出は、特に前半のテンポが良く、シリアスな内容とユーモア感覚がしっくりいっている。脚本家出身ながら、監督としても全体を見通した構成がきっちりできるところがいい。後半は沈む展開で、筋はこびも少しもたついてくる。あんまり後味のよい終わり方ではないので、映画の印象を弱くしているのは事実だろう。

この映画で「悪役」とされた企業がWEBサイト上で過去の過ちやこの映画に関してきちんとコメントを寄せているのが興味深いところだった。映画を見た後でそちらも一読すると面白かろう。 

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