4/23/1999

Lost and Found

ライラ フレンチKISSをあなたに

見栄えの冴えないイタリアン・レストランのオーナーが、おなじアパートに越してきたフランス人の美人チェリストの歓心を買おうと、付き合うきっかけをつかむために彼女の犬を誘拐するが、この犬が友人から預かっていた大事な指輪を食べてしまった。犬を返すタイミングを失った主人公。一方、ダンディで金持ちの「もと婚約者」が彼女を追って登場する。

デヴィッド・スペイドとソフィー・マルソーの共演作である。デイヴィッド・スペイドといえば、90年代のサタデーナイト・ライヴ出演者のひとりで、映画においては若くして死んでしまったクリス・ファーレイとのコンビによる 『Blask Sheep』、『Tommy Boy』などがある。で、今回は脚本も兼ねての主演作というわけだ。

しかし、笑えないんだよな。「薄笑」コメディというやつだ。2-3は笑えるギャグもあったが、それよりなによりエンドクレジットのオマケが一番面白いという始末。

昨年の『メリーに首ったけ』の影響だろうか、あの映画が大ヒットしたことで、やってもいいギャグの限界が押し広げられた感があるのだが、軽いところでは犬の糞をつかったギャグの下品さや、放り投げたり乾燥機に入れてスイッチを入れたりの「犬虐待」ギャグなどは、あの作品あってのことのように思える。もっとも、ファレリー兄弟だと、そこにもう一歩、予想のつかない追い打ちがあって強引に笑いをとってしまうのだが、本作にはそういう大胆さはみられない。

ロマンティック・コメディとしては登場人物の心情や、心境の変化が描けていないのが弱い。ソフィー・マルソーのキャラクターがチェロの奏者だと云う設定もストーリー展開に活かされていないが、それよりなにより、信じていた相手に裏切られたことを知ったあとの彼女の心理変化がきちんと描かれていないので、ラストのハッピーエンドも白けてしまう。

主人公の側もそうだ。付き合っていた女性と分かれたところにたまたま美人が現れた程度にしかみえず、その相手と「どんなことをしてでも付き合いたい」と思うまでの理由付けも弱ければ、そういう心境の変化も描かれない。「彼女の心を手にするためにはどんなことでもして見せる男の物語」という意味の宣伝コピーが使われていたが、なぜそうなのか、この映画は何の説明も聞かせてくれないんだよね。

要は、ドタバタコメディとしてはギャグも演出も冴えず、ロマンティック・コメディとしては表層的で全く心が入っていない。笑えない、共感できないじゃ、商品としても欠陥品だろう。本作の監督は、本職はTVプロデューサーで、 過去に低予算コメディの監督経験もあるジェフ・ポラック。まあ、脚本も悪いけれど、演出も、ねぇ。

0 件のコメント:

コメントを投稿