25年目のキス(☆☆☆)
シカゴ・サンタイムズで働く主人公が、社長の気まぐれな発案によるティーンズに関する潜入レポート記事を執筆するために、17歳のふりをしてハイスクールに転入!念願のレポート記事執筆の機会だったが、高校生活に溶け込もうとすると彼女自身の地獄のようだった青春が脳裏に蘇ってくるのだった、という少し変則的なハイスクールコメディ。主演はここのところ絶好調のドリュー・バリモアで、製作総指揮を兼ねての主演だ。
これは悔いの残った過去をやり直す機会を与えられた主人公が、その過程で自分自身を再発見していく物語である。高校時代、残酷な虐めの対象にされていた主人公が再び体験する高校生活。今度は学園の人気者たちとお近づきになり、スポットライトを浴び、クールな男の子からプロムのパートナーに選ばれる。かつての自分が例え夢見ても叶えられなかった体験をするチャンスをものにする。それは軽薄かもしれないが、甘美な夢の実現だ。
どうも、そうした役をドリュー・バリモアという女優が演じていることで、見ているこちらには違った感慨すら湧いてくるのがこの映画のキモではあろう。
だって、まだ23歳(!)の彼女は、『E.T.』の子役として人気者になったあと、ドラッグやアルコールにおぼれ惨めな青春を送ってきたことは周知の事実。そんな生活から立ち直り、女優としても見事にカムバックを果たし、自らプロデュースを買って完成させた最初の作品がこれなのだ。主人公が17歳に戻って束の間幸せな高校生活を体験するプロットが、ドリュー自身のささやかな願望の反映に思えてくるのも不思議ではない。
映画のストーリーは、束の間の「人気者」としての生活を経た主人公が、しかし、それをよしとする価値観の表層的な部分や醜さも自覚し、説教がましくならない程度に刺してみせ、最終的に多様性な個性の尊重というところに着地する。ハイスクールものでは、人気者と日陰者の二元的な対立軸をおき、人気者グループを悪役扱いするパターンもよく見られるが、高校生目線ではなく、高校生を一度体験した主人公の目線が入ることによって、この映画独特のバランス感覚が出た。
ドリュー・バリモアは全編出ずっぱりで大熱演である。高校時代のサえない苛められっ子ぶりも堂にいっているし、無理に慣れない若作りをした場違いな感じや珍妙な身体の動き、ドラッグでハイになってしまった場面でのほとんど捨て身の演技などは、プロデュースに名を連ねた主演女優が敢えて演らなくてもいいレベルなんじゃないか、と心配になるほどであるけれど、それを敢えて演ってみせるところにこの人の人柄が現れていて好感を持つ。しかも、どうやら最近の新路線である「純真な夢見る女の子」キャラクターを、持ちネタとして完成させることができたのではないか。
『スクリーム』シリーズなどで人気上昇中のディヴィッド・アークエットが共演。ドリュー演じる主人公の弟で、高校時代は人気者として名を馳せたが、高校で人気ものになる意外に取り柄のない男、という、これまた(現実にも少なくないとはいえ)少々残酷な設定のキャラクターを怪演して笑いをさらう。また有名人カップルに扮装するプロムで彼がする扮装は映画ネタなのだが、これも出所を知っていれば爆笑必至だ。
『ホームアローン3』に起用されていたラジャ・ゴズネルの演出は、ドタバタや下品さが、一線を越えそうでこえない節度を守っていて、一応、ハートウォーミングでロマンティックなコメディであるというパッケージを逸脱することはない。ともかく、いい気分で劇場をあとにできる映画である。エンドクレジットがまた一工夫あって、スタッフやキャストの名前のと一緒に、高校時代の写真が・・これは笑えるよ。
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