4/02/1999

Out-of-Towners

アウト・オブ・タウナーズ(☆☆★)

仕事を首になり、新しい職を探す目的でオハイオから大都会、マンハッタンに向かう夫に、事情を知らずに同伴した妻。飛行機が霧の深いニューヨークを避けてボストンに迂回したのは、悪夢のような24時間の始まりに過ぎなかった。子供たちが自立をして家を出ていったあとに残された夫婦が大都会で巻き起こす珍騒動。

1970年製作のニール・サイモン脚本、アーサー・ヒラー監督作品『おかしな夫婦』のリメイクだというのだが、ごめんなさい、ジャック・レモン主演のオリジナルは観ていない。今回の作品は、これが二度目となるスティーヴ・マーティンとゴールディー・ホーンのカップルに加え、ジョン・クリースが共演。TV出身のベテランで、映画では『ジャングル・ジョージ』で知られるサム・ワイズマンが監督している。

子供が巣立ち、夫婦2人きりになった家庭の事を「エンプティ・ネスト(空の巣)」とよぶが、これはそんな中年夫婦がお互いへの愛情を再確認する過程を、災難まみれのN.Y.旅を通して描くコメディである。

これだけのキャストを集めておいて、なぜ今更ニール・サイモンもののリメイクになるのか、そこのところがちょっと分からない。話そのものにはあまり新味がなく、全てが想像の範囲内に収束していく定番のドタバタ劇、のように見えてしまうのは、やはり土台が古いということと、それをきっちり現代的な物語に翻案しきれていないということではないか、と思ってみたりする。

ただ、想像したよりもスラップスティック色が強いのは、出演者の個性に合わせたからだろうか。おそらく、黄金コンビといってよい主演の二人に加え、あの「モンティ・パイソン」の、と枕詞をつけるまでもないジョン・クリースの「芸」を楽しむ映画だと割り切ればいいんだろう。

スティーヴ・マーティンとゴールディ・ホーンは、以前にフランク・オズ監督の『ハウス・シッター 結婚願望』で共演したことがあるだけなのだが、まるで長年コンビを組んでいるかのように息があっている。スティーブ・マーティンが独特の体の動きと台詞まわしで笑わせれば、ゴールディ・ホーンが実年齢が信じられないようなチャーミングさを振りまく。ゴールティ・ホーン、今回は見せ場も多い。若い男を誘惑してホテルの部屋の鍵を奪おうとするくだり、警察署で逆切れして啖呵を切るシーンなど、流石はアカデミー賞女優と呼びたい肝の座りかたで、大いに笑わせてもらった。

しかも、ジョン・クリースはマンハッタンのホテルで、スノッブなマネージャー役で登場して持ち技を披露する怪演。コメディ・ファンの暇つぶしとしては、もう、それだけでOKだ。

今回の脚色は近作『恋は嵐のように』の脚本家、マーク・ローレンス。最後まで「中年カップルが迎えた結婚の危機・愛情の再確認」のテーマを外さずに、律儀に脚色してみせた。本当は、このキャストだったら、もっとハジけたコメディを期待したいんだけど、まあ、致し方あるまい。