6/11/1999

Austin Powers: The Spy Who Shagged Me

オースティン・パワーズ:デラックス

タイムマシーンで過去に戻り、宿敵オースティン・パワーズの"mojo" を奪ったDr.イーヴル。不能になってしまったオースティンも彼を追って過去に戻り、月に建設された ”レーザー”によって再び人類を恐怖のどん底に陥れようとするイーヴルと対決する。

・・・というお話しなんか、もはやどうでも良くなってくる大ヒット作、『オースティン・パワーズ』の続編である。主演のマイク・マイヤーズ自身の脚本、前作と同じジェイ・ローチ監督で、主要な脇役は皆続投。新ヒロインとしてヘザー・グラハムが登場。若き日のNo.2としてロブ・ロウも出演している。タイトルは、「私を愛したスパイ(The Spy Who Loved Me)」のパロディだね。

マイク・マイヤーズは続編づくりにはあまり乗り気ではなかったらしい。ウェインズ・ワールドの時も、周囲が相当無理強いしたという話もきく。実際のところ、続編を作るのは本当に難しいものだ。この作品も、完成度とオリジナリティは確実に前作の七掛けだ。

そうはいっても、大笑いして楽しいひとときを過ごすことはできる。なにせ、前作で確立されたキャラクターとシチュエーションがあって、その上に反復し、エスカレートしていくギャグが乗ってくるのだから、そこには「続編」としての固有の面白さがある。

イーブルと息子の愛憎は愉快だし、No.2の悲哀も相変わらず笑える。エリザベス・ハーレイのようなゴージャスな美女ではないが、変顔なヘザー・グラハムは愛らしい。「60年代では通じない現代一発ギャグ」、「ミニ・ミー」、しつこいくらいの下ネタの反復、あっと驚くゲストスターたちの登場、そのサービス精神似は頭がさがる。オリジナルの挿入歌やスコアが前作同様、遊び心満載で、それも作品のレベルを下支えするのに貢献している。

が、ギャグが全てに優先され、ストーリーが散漫になっているのは事実である。ストーリーの中でギャグが展開されているのではない。ギャグをやるためにストーリーがあるのだ。そこは、曲がりなりにも「60年代スパイもののパロディ」という骨格があった前作とは最も異なるところである。

前作では、主人公の存在や、物語の組み立てそのものが、過去の作品群やカルチャーに対する愛情と鋭い批評精神の発露であって、そこが単なる「バカ映画」と一線を画す点であった。が、今回の作品は、表面上は前作と似ているけれども、結果的に前作で確立してしまった世界を使って遊んでいるだけなのだ。そこには最初の作品が切り開いた独特の面白さは、もはやない。

まあ、そうはいっても、ありとあらゆるナンセンスが不思議と収まるところに収まって、危ういところでバランスを保っているのが本作だと思う。作品に人気と勢いがある今だから、成立する作品であろう。

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