6/25/1999

General's Daughter

将軍の娘 エリザベス・キャンベル(☆☆)

ジョージア州の陸軍基地内で、女性大尉の惨たらしい全裸暴行死体が発見された。彼女は退官を目前にした人望の厚い将軍の娘であったため、外部に公表されないよう、軍隊内部での独自調査が進められることになるが、誰も想像し得ない驚愕で残酷な真実が明らかになっていく・・・という、ネルソン・デミルのベストセラー軍隊ミステリー小説の映画化。新人クリストファー・ベルトリーニとベテランのウィリアム・ゴールドマンが脚色し、『コン・エアー』のサイモン・ウェストが監督。出演はジョン・トラボルタ、マデリーン・ストウ、ティモシー・ハットン、ジェームズ・ウッズ、ジェームズ・クロムウェルら。

残念ながら、あんまり面白くない。売れた原作と、ベテラン俳優の「顔」があればなんとかなるとでも思ったか。

猟奇的レイプ殺人。誰がやったのか。何故やったのか。外部からの介入の前に事件の真相を明らかにしなければならないプレッシャーの中で、調査官は謎を追っていく。男社会の典型である軍隊において、将軍の娘であり、有能な士官として生きる難しさや、父親と娘の関係を背景とした愛憎。これ、本来、ミステリーとしての面白さと、重たいドラマやテーマが絡んでいるはずの話だと思うのだが、映画はミステリーとしてはちっとも面白くないのに加え、微妙な題材を見せもの主義的・商業主義的に扱うデリカシーのなさで、見る人によっては不愉快に感じるかもしれない。

そもそも、脚色がうまくいっていないのではないか。原作を刻み込んだが為に生じたと思われる、本筋に直接絡んでこない無駄な設定やシーンが多いし、焦点がどこにあるのか良く分からない。私のように原作を読まずに映画を見ている人間にしてみれば、こんな退屈な話なのに、どうしてベストセラーになるのか不思議に思うほどである。

もちろん、それを預かる演出も悪い。サイモン・ウェストは、カッコが良く刺激的な映像をスピーティにつないでいくことにしか興味がないように見える。この過剰な絵作りは正直云って鼻につくばかりで、ドラマに貢献していない。短いカットを落ちつきなくつなぎ、役者たちの熱演・怪演を寸断する。そして、映画は最後まで、登場人物の心理に深く踏み込むことなしに終わってしまう。

ジョン・トラボルタやジェームズ・クロムウェルは、そもそも大きな役であるし、そこに立っているだけで存在感を出せるからよいとして、MPを演じるティモシー・ハットンや、主人公のパートナーを演じるマデリーン・ストウのキャラクターは描きこみが足りず、ことに後者など、存在しなくても物語的に大差がない程度の無駄遣いで可哀想だ。男ばかりの軍隊の中で捜査を進めて行く女性として、「将軍の娘」の立場とダブらせるなど、活かし方があったのではないだろうか。役者としては、相変わらずパワフルな怪演で場面をさらうジェームズ・ウッズが得をしている。

0 件のコメント:

コメントを投稿