2/08/2009

Mamma Mia !

マンマ・ミーア!(☆☆)


クレジットをみていて、Playtone か、、、トム・ハンクスの会社だよなぁ。トム・ハンクスの会社ということは、『My Big Fat Greek Weddings』もそうだったなぁ、奥さんのリタ・ウィルソンがギリシャ系だったなぁ、ギリシャつながりだなぁ、などと考えていた。きっと、そんなこんなで映画化権を取得したのだろう。

で、これを映画にする意味って何だったのだろう?

いや、もちろん1999年初演の舞台版がスマッシュ・ヒットした記憶も新しいうちにリリースされた本作が、すでにして興行的大成功を収めているというのはわかっている。世界の主要マーケットで最後の封切りとなった日本でもそこそこの観客を集めている。だから、ビジネス的には大いに意味があったと云ってよいだろう。もちろん、話題になったと入っても舞台のチケットは高いし予約が面倒だし、そもそも劇場まで出かけるのも面倒だ、と二の足を踏んでいたひとにも朗報だっただろう。そういう人々を劇場に呼び込んで、みんなハッピーなら意味があったと云えるのかもしれない。しかし、これを映画でやって、(お金が儲かってウハウハなのはともかくとして)何が面白かったのだろうか、と。

そりゃ、メリル・ストリープ、ピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスゲールドといった映画界では名の知れたキャスティングは、映画好きの興味を引くかもしれない。でも、我々が目にするのは、いい年なのにフィジカルに無理をやらされて息も絶え絶えの出演者たちの無残で見るに耐えかねる姿なんだよ?聴かされるのは下手くそも大概にしたほうがいいピアース・ブロスナンの素人カラオケ大会なんだよ!あれを演出意図というのなら、そんなかくし芸大会、スクリーンで見たくない。演出意図というのなら、それがリアルに息絶え絶えなのでなく、演技として息絶え絶えなところを撮るべきなのではないか。普通に歌が下手なところではなく、歌が下手な演技をこそ撮るべきではないのか。いったい何を考えていたら、役者たちのこうも痛々しい姿をフィルムに焼き付けることができるのだろうか。

結局、映画と舞台の根本的な違いはどこにあるのかということを色々考えさせられる。つまり、舞台であれば、それなりの年(成人した娘の両親)という設定のキャラクターを、若い役者が演じてもそれほど不自然ではないが、映画だとこういう悲惨なことになってしまう。(いっそのこと、『スター・ウォーズ』のドゥークー伯爵や、『ベンジャミン・バトン』のブラッド・ピットのように顔だけ貼り付けりゃ良かったかもね。)それに、陽光きらめく風光明媚なギリシャの小島を舞台にしているから、映画にすれば実際にその素晴らしい景色を見せることができると考えたのかもしれないが、それも舞台の設定として想像力を働かせる方がよほど心が躍り、実景の中で滑稽なダンスが繰り広げられる様はお笑いというか、いわゆる「ミュージカルの不自然さ」そのものにしかならないのだから泣けてくる。断言するけど、こんなものがヒットしちゃうから、ミュージカル嫌いが増えるんだよ。

これは、もともとの舞台がアイディア勝ちの一発ネタのようなもので、それを舞台というクローズドな環境で、観客との一体感を保ちながら保ちながら観客層立ちでsing along するっていうなら楽しかろうと思うが、映画にすればそれだけ欠点も目立ってしまうと思うのだ。はじめからヒット曲ありきで構成されているから、あるシーンは不必要なまでにずるずると引き伸ばされ、あるシーンでは展開上不自然でもその曲を入れたいがあまりに無理やり脚本にねじ込まれるといった具合。ミュージカルでは、ときに、その音楽と歌詞、ダンスの併せ技によって、普通の劇映画が同じ時間では表現しきれないほどの様々な感情や物語を一気に語って見せるような、鮮やかな瞬間を作り出すことも可能だ。だが、この作品では、歌やダンスが重要でもないシーンをだらだらと弛緩させて引き延ばすためにしか機能していない。そんな体では、優れたミュージカルであるかどうかの前に、優れた映画ではありえないし、当然、優れたミュージカル映画足りえるわけがないのである。

『シカゴ』の興行的・批評的成功あたりを境にして次々とミュージカル映画が作られるようになった。そのなかでも成功しているものは、「映画」としてどう見せるのか、映画としてどう表現するのかという課題に正面から、果敢に取り組んでいるのが見て取れる。一方、(興行的にはともかく)失敗作の烙印を押されるものは決まって、「そんなんならば舞台を正面から撮影しておけよ!」というくらいに工夫がないのが常である。『マンマ・ミーア!』の映画版はもう、あからさまに後者の部類であり、全編、これ、ひたすら退屈で醜いのだ。もともと期待値は低かっただけに、それを超える無惨さには絶句で応えるしかあるまい。

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