8/14/2009

G.I Joe

G.I ジョー(☆★)

いや、見終わった瞬間に、この映画を見たことすら忘れていたというくらい、心にも頭にも何も残らない、ただの暇つぶし映画。駄作とか凡作とか呼ぶほどのものですらない。米国娯楽映画の白痴化を絵に描いたような作品で、ハリウッド映画がつまらなくなったという人が真っ先に槍玉にあげるのに最適の作品である。(そういう意味では存在価値がないわけでもないのか。)

すっかり時代に乗り遅れている当方、「G.I ジョー」と聞けば、リアル志向の米軍兵士アクション・フィギュアだと思っているから、いまや世界の嫌われ者と化した米軍兵士が主人公で映画になるのかね、と思ってみたり、TV版『サンダーバード』がそうだったような人形アニメ、はたまた玩具の兵士人形が活躍するジョー・ダンテの『スモール・ソルジャーズ』(兵士人形が悪役だったけどな)のような映画になるのかしらん、と思ってみたりしていた。(『スモール・ソルジャーズ』はわりと好きだ。)しかし、時代と共にリニューアルを繰り返したハズブロ社の「G.I.ジョー」シリーズは、米国籍を中心とした特殊部隊「チームG.I.ジョー」の面々が特殊装備を駆使し、世界征服をたくらむコブラ団と闘うという非常に退屈な「お子様設定」を与えられ、80年代にアニメ化され、一部で人気をはくしていた模様である。本作、『G.I. ジョー』は、『トランスフォーマー』でうまい汁を吸ったハズブロによる玩具のバックストーリーものアニメの映画化第2弾なのである。

これを任せられたのは、『グリード』で名を上げ、『ハムナプトラ』こと The Mummy 正・続で知られるスティーブン・ソマーズである。派手で荒削りとはいえB級題材をサービス精神旺盛に楽しませる作風は相変わらず。だが、土台が底の浅いお子様アニメであることもあって、大人の観客が本気で面白がれるような内容にはなっていない。悪の秘密結社と戦うヒーロー・チームというセットアップは現代的なビジュアルに反して案外クラシックで、このあたりはソマーズの資質に合うところだとは思うのだが、派手で刺激的なアクションで全編を埋め尽くそうとする意欲とエネルギーはともかく、緩急なしにただただアクション・シーンを羅列した構成には辟易とさせられる。こういった類の刺激というものは、メリハリをつけて緩急をつけるからこそジェットコースター的な面白さにつながるものだ。いくら派手にドンパチやってみせようが感覚が麻痺した観客はスリルも刺激も何にも感じない。悪い意味でのパーフェクト・ポップコーン・ムーヴィーである。

玩具展開上欠かせないマンガチックな秘密兵器や装備が物語の足を引っ張っていて面白くない。こういう類のものは却って、最強チームが最強たる強さや凄さ、格好良さを伝える上での阻害要因になるものだ。せめてガジェットとしてのデザインや機能に新鮮味があれば楽しめるのだが、独創性が皆無でがっかりさせられる。ほとんど描写時間がないわりには主要キャラクターを描き分ける努力をしているのは事実であるが、いかんせん、多人数、非固定式のチーム編成で、大多数はチーム内での役割分担や得意技もよくわからないまま終わってしまう。なかでも一番影が薄いのが主人公(らしき人物)だというのが、本作の退屈さを象徴している。特殊装備なしに闘っているように見える、(特殊装備をつけた人間より速く、強い)黒忍者(レイ・パーク)と白忍者(イ・ビョンホン)の対決だけは、キャラクターの特徴も分かりやすく、そこそこ面白く見ていることができた。

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