8/08/2009

He is Just not That into You

そんな彼なら捨てちゃえば?(☆☆★)


『そんな彼なら捨てちゃえば?』・・・・まあ、女性向き映画として売るための邦題だ。ここから喚起されるのは、「主体的で強い現代女性が、つまらない男を捨て、恋愛を積極的に楽しむ(明るい)コメディ」を想起させられるけれど、実際のところは、すれ違ってばかりのビター・スウィートな男女関係を描く群像劇なので要注意。

原題は「彼、それほどあなたに入れ込んじゃいないわよ」といったところだ。原作というのだろうか、ネタもととなっているのはSex & the City の脚本家による)同タイトルの恋愛指南書で、これを材料に使って物語仕立てにしたのが本作というわけである。ちなみに、訳書の邦題が『そんな彼なら捨てちゃえば?』で、映画はこちらをいただいてきたようだ。まあ、本作の登場人物が語る恋愛における駆け引きのあれこれが、「原作」由来のネタということになるだろう。物語としては、そうした駆け引きだったり、それに端を発する気持ちのすれ違いだったり、引き起こされる悲喜劇だったりを、複数のカップルの関係性のなかで具現化していくかたちで描かれている。この脚本を書いたのは、『25年目のキス (Never been Kissed)』を書いたコンビ、アビー・コーンとマーク・シルバーステインだ。実はこれ、ちょい役で出演のあるドリューが主催するフラワー・フィルムズの作品なのだ。自身のヒット作であり、佳作を書いたコンビを起用しての映画化、というわけだ。

出演者が多彩である。なにしろ、スカーレット・ヨハンソン、ジェニファー・アニストン、ジェニファー・コネリー、そしてもちろん、ドリュー・バリモアと、特に女優は新旧華のあるところをずらっと揃えている。しかし、作品の柱になっているのは、恋愛下手で損ばかりしている女の子を演じるジニファー・グッドウィンと、彼女の相談に乗って友人付き合いしているうちに情が生まれてしまう青年を演じるジャスティン・ロングだ。この二人、役者としても、役柄としても、映画の主役というよりは、コメディ・リリーフ的な脇役タイプであるところが面白い。そして、映画の一番いいところをさらっていくのが、意表をついてベン・アフレッだ。

"How to" ものというのか、英語でいうところの "Self-Help book" が土台というなら、もっとポップで楽しく、虚実はともかく薀蓄いっぱいの映画に仕立てることもできたであろうし、おそらく、普通はそれを考えるものだと思う。この映画のセンスがよいところは、敢えてそうしなかったところ、コメディ仕立てを装いながら繊細なドラマを狙ってきたところであると思うし、それ自体は評価したいと思っている。ただ、逆に、そういう難しいところを狙ったがゆえにハードルが高くなり、脚本にしろ、演出にしろ、どこか力が及んでいないように思われるのである。少なくとも、軽いコメディを期待した観客をいい意味で裏切り、満足させるだけのパンチはここにない。監督はTVドラマを中心に活躍しているケン・クワピス(私にとっては悲惨な出来栄えだったシンディ・ローパー主演『バイブス/秘宝の謎』の監督、のイメージが未だに離れないんだが)。

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