8/22/2009

Transporter 3

トランスポーター3 アンリミテッド(☆☆)


リュック・ベッソン(製作・脚本)&ヨーロッパ・コープが次々送り出してきた仏製香港映画とでも呼ぶべき軽量B級映画群のなかで、私が一番面白いと思っているシリーズが『トランスポーター』だ。これも回を重ねて3作目、本作のエンディングから判断するに、これでいったん終止符を打つことになるのだろう。残念ながら、それも致し方あるまい、という出来栄えである。1作目のコーリー・ユン(おお、まさに香港映画人!)がシリーズの基調を作り、後に『インクレディブル・ハルク』で成功を収めるルイ・レテリエが、荒削りながらB級娯楽作らしいダイナミックなアクション演出を披露したところで、今回の監督はオリビエ・メガトンへとバトンタッチ。まあ、そもそも監督云々で見る映画ではないのだが、せっかく肉体を張ったアクションが出来る役者を使いながら、編集でガチャガチャごまかすタイプの演出で、肝となるファイトシーンが台無しである。

しかし、3作目の今回、一番ダメなのは、監督の演出スタイルなんかではない。これまでにもまして知能指数の下がった頭の悪い脚本だろう。リュック・ベッソン製作・脚本の作品群を「仏製香港映画」と呼ぶのは、ジェット・リーと相性がよかったとか、マーシャルアーツを取り入れているとかいうことでなく、「そもそもまともに脚本を用意しているのか?」という侮蔑を、その昔、盗作を恐れてまともな脚本なし量産されていた香港映画になぞらえていっているつもりである。つまり、最初から精緻で観客をうならせるような脚本なぞ、これっぽっちも期待しちゃいないのだが、今回の脚本は、こちらの(存在するとはいえないくらい低い)期待値をさらに余裕で下回ってくれるから恐れ入る。悪役が、自分の目的を達成する上で、こんなまどろっこしい手段をとらなくてはならない理由がさっぱり理解できないのだから、見ていてバカらしくなってくる。

魅力のないヒロインの造詣も、この手の映画においては致命的であると思う。もともとベッソンの好むヒロイン像というのが偏っているというのは過去の作品を一通り見ていればわかることで、一般的な意味合いにおいて「魅力的」なヒロインを期待するのは間違いだとは思っている。しかし、今回、このキャラクターは魅力以前の問題で、みていていらいらするし、腹立たしいばかりである。キャスティングされたナタリア・ルダコヴァの演技(だけでなく容姿)にも問題があると思うが、そもそも脚本が悪いこと、女に興味がないとでもいわんばかりに単調な演出も酷いものだ。このキャラクターに対して、主人公が(最終的には)恋に落ちる理由が全く理解できないのだから、そういう観点からも、作品として破綻しているといわざるを得まい。

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