7/03/2010

Bayside Shakedown 3 Set the Guys Loose !

踊る大捜査線 The Movie 3 ヤツらを解放せよ!(☆☆)

想像以上でもなく、想像以下でもなく。いろいろな小ネタを目一杯詰め込もうとした結果、2時間20分もの尺を使いながらもいびつで消化不良になっている。また、それだけ詰め込んでみたところで、長年のあいだに多様化してしまったファンのツボにもきちんと応えきれていない。きっと、いろいろな人がいろいろなアイディアを出したのだろう。苦心惨憺まとめてみたらこんなふうになった、と。

このシリーズ、そろそろ「イベント映画」路線を捨て、連続ドラマに回帰すべきではないだろうか。いかりや長介亡き後、キャスト(キャラクター)の世代交代を図りながらシリーズを続行するというのであれば、脇役にもスポットを当て、日常の延長線上でキャラクターたちのひととなりや人間関係をじっくり描き、それを育てていく余裕こそが必要だろう。それを数年に一度の派手なイベントとしての期待を背負う「映画」に望むのは少し難しい。

かのハニバル・レクターが獄中にいながらダラハイドを利用して牙をむいたことを想起させる「事件」が、湾岸署の引越しという混乱の最中に進行するというのが本作の骨組みである。およそ警察ものの定番外しからスタートしたこのシリーズだから、警察署の引越しというアイディアはそれらしくて悪くない。ここに、黒澤やら『ダークナイト』やら『エヴァンゲリヲン』やら、ありとあらゆるものの「オマージュ」が盛り込まれ、何度も繰り返して楽しむファンに向けて、さらに細かいお遊びやリファレンスがふんだんに挿入される。まあ、やりすぎれば鼻につくが、それもこのシリーズのお約束だ。

警察署の引越しを担う業者にしては身元確認が甘くてリアリティがないとか、セキュリティ・システムの解除がそんな安易でいいのか、といった脱力気味の部分も少なくないが、まあ、それもこのシリーズのお約束のうちなんじゃないだろうか。まあ、こういうところで白ける人もいるんだろうが、あくまでコメディだと思えば、許容範囲といえなくもない。

良い意味でも悪い意味でも君塚脚本らしさもある。映画版シリーズでも、ネットで知り合った若者同士であるとか、リストラ会社員たちを犯罪者として(ある種の偏見と共に)描いてきた延長線上で、メールアドレスでしか識別されないパートタイム労働者といったいかにもな時事ネタを潜り込ませる。今という時代の空気を感じさせるのはよいが、不特定多数のネットユーザーであるとか、社会における構造的な弱者に対する分かりやすい悪意や偏見が強く出ているのは苦笑すべきところなんだろうね。まあ、目をつぶってやってもいいや。仕方ない。

お笑いやおふざけのさじ加減が少しずつ間違っていて、笑える前に不快に感じるところも多々あるんだが、まあ、それもいつものこと。ん?そうだっけか?

しかし、頭をからにして、いろんなところに目をつぶって、大目に見てやって、初めて楽しめる作品っていうのはなんなんだろう。まあ、この監督がシリーズ以外で積み重ねた惨憺たる駄作の山を見れば、端から大きな期待をする方が間違っているのは周知の事実なんだけどね。

ひとつ言えることは、この作品の関係者たちはスカンクの臭いを舐めているってことだね。あんなもんで済むはずないないだろ、実際のところ。

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