7/17/2010

Toy Story 3

トイ・ストーリー3(☆☆☆☆)

最初の『トイ・ストーリー』が公開されたとき、「とりあえずフルCGIアニメーションで作ってみました」というようなエクスキューズなしの仕上がりに驚き、感心させられた。なによりストーリーが面白かったし、キャラクターが生きていた。その後、『バグズ・ライフ』を1本はさんで公開された『トイ・ストーリー2』には感嘆させられた。目に見えてレベルが高くなったCGI技術、笑いと涙のバランスがとれた脚本の巧みさ、演出の的確さ、細部への徹底したこだわり、そしてなにより1本の映画としての充実度と完成度。あのときの衝撃はまるで昨日のことのように覚えている。

その前作のリリースが1999年だったから、10年以上が経ったわけだ。この間にはいろいろなことがあった。

なにより、ピクサーがディズニーに吸収されるかたちながら、事実上、母屋を乗っ取ったのは大きい。あれがなければ、ピクサーと手を切ったディズニーがシリーズの続編を勝手に作っていたはずである。本作がピクサーの作品として完成したことを心から嬉しく思う。また、この間、ピクサーは、7本の長編作品を、それぞれ驚異のクオリティで作り上げ、ヒットを飛ばし続けてきた。CGI技術も、水や毛や重力の表現に始まり、人間のキャラクター描写というチャレンジを試みるレベルになってきている。演出面においても、アニメーションであるという枠組みを超え、映画として、ひとつ高い次元に到達しつつある。ラセターという一人の作家だけでなく、「チーム」・ピクサーとして、安定した品質で作品を作り続けるノウハウも確立したといっていいだろう。

そんな10年を経て作られた、ピクサーの象徴たる『トイ・ストーリー』の続編である。絶対にハズさないだろうとは思っているが、さりとてどんな作品になるのか、期待半分、不安半分で待っていたところ、作り手たちは、この10年という月日を、そのまま物語に織り込み、3本をまとめ、ひとつの大きな物語として完結させることを選択したのだった。続編ではなく、大きな物語の終章。賢いね。簡単そうでいて、なかなかできない発想の転換、これが本作を成功に導いた鍵だと思う。

主人公たちの持ち主であるアンディ少年も成長し、大学に通うために家を出るというのが今作の発端である。そして、『2』のときに語られた「玩具と持ち主の関係」、「玩具としての幸せは何か」というテーマを、もう一歩、深くつきつめていく。

まあ、そういう意味で言えば、テーマ的には前作で一度扱ったものの焼き直しである。が、前作で、いつか必ずくるであろう「別れのとき」を覚悟しながら、いったんは持ち主の元に帰ることを選んだ主人公、ウッディが、いよいよ「その時」を迎える話しである、と思うと、合点がいくし、感慨も深い。センチメンタルに流れがちな設定だが、そこはピクサー、脱獄ものの要素を取り込んだアクション・アドベンチャーとしてストーリーを練り上げてきた。大技小技から爆笑必至のギャグに至るまで、実によくできていると思う。しかし、その一方、致し方ないことと承知しつつも、「悪役」を必要とする物語の構造は安易だとも思っている。(まあ、悪役の描き方も前作以上に深みがあって、そういうところに手抜かりがないのもまた、ピクサーらしい仕事ではある。)

前作からの技術的な進歩はありとあらゆるところに及んでいる。(なにしろ3Dだ。)しかし、一番大きく進化したのは人間のキャラクターの表現だろう。キャラクターのデザインも(1作目、2作目に比べて)可愛くて親しみやすいものへと変わっているのだが、それ以上に、見せ方、演出のレベルが格段に高くなった。もちろん、ここ数作、ピクサー作品では人間キャラクターの扱いがひとつのテーマになっていたとは思うが、本作は明らかにひとつの到達点である。本作の肝でもある「別れ」のシーン、まさか、『トイ・ストーリー』なのに、人間キャラクターの「芝居」で泣かされるとは思いもよらなかったな。必見。

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