7/17/1998

The Mask of Zorro

マスク・オブ・ゾロ(☆☆☆)

圧政に苦しむスペイン領カリフォルニア。かつて民衆のために闘った伝説的な英雄「ゾロ」は、圧制者の手で妻を殺され、幼い娘を奪われ、20年にわたって幽閉されてきた。彼と出会った主人公は殺された兄弟の仇を取るため、圧政に苦しむ民衆を救うため、元祖ゾロのもとで修行を積み、新たなヒーローとして生まれ変わる!アントニオ・バンデラス主演、共演にアンソニー・ホプキンス、キャスリン・ゼタ・ジョーンズ。製作総指揮にスティーヴン・スピルバーグ、監督に『ゴールデンアイ』で手際の良いアクション演出を見せた新鋭マーティン・キャンベルが起用された。

クラシカルな活劇、古くからのヒーローをスクリーンに復活させようというのが目論見か。必要最低限の人物描写を交えつつ、無理のない構成でスマートに書き上げた脚本は、あまり驚きはないもののうまくまとまっている。タイトルを「ゾロの仮面」としておいて、ヒーローの交代と2世代にわたるドラマとして構築したところが面白いところか。古典的なヒーローを蘇らせるためのアイディアとして優れている。突出した面白さはないが、サマーシーズンの娯楽作品として、暑い日の暇つぶしには最適だ。

映画は本家ゾロの大活躍と悲劇を畳み掛けるように見せた後、中盤でじっくりとドラマを描き、いまや伝説のゾロを襲名したバンデラスによるアクションになだれ込む構成。中盤のドラマがあって後半の宿命の対決が盛り上がるという筋立てだ。

演出面では特筆すべきものは見られないが、役者が決まっている。なんといっても本家ゾロを演じるアンソニー・ホプキンスの貫禄と格好の良さ。最初の十数分の剣を振り回しての活躍は惚れ惚れとさせられる。特訓のシーンでも一枚上手振りを発揮、さすがに名優の存在感は違う。

一方、マスクを譲り受ける新ゾロを演じるバンデラスは、どちらかというと間抜けさも含めた親しみやすさが、ワイルドさと同居しているのが魅力。カッコ良さ一辺倒でないあたりが現代的なヒーロー像といったところ。

今作への起用で注目を集めることになるであろうヒロイン、キャスリン・ゼタ・ジョーンズは、気の強そうな美貌はキャラクターにどんぴしゃりとハマって魅力的だが、それはともかくとして、演技が少々大根っぽい。表情のバリエーションが少ないように思う。それでも堂々とした存在感と、身のこなしはたいしたもので、化けるかもしれないという予感はある。

衣装、小道具、セットが意外に凝っていて雰囲気満点。ジェームズ・ホーナーの音楽も、いつものような使いまわしの旋律が余り顔を出さず、フラメンコ風、カスタネットなどを交えたラテンフレーバーたっぷりのアクション・スコアになっていており、聞き物だ。(1998/7)

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