7/17/1998

There's Something About Mary

メリーに首ったけ(☆☆☆☆)

高校時代の恋人が忘れられない主人公は、それから13年たったいま、怪しげな私立探偵を雇って、キュートでセクシーなメアリーの行方を探そうとするのだが、メアリーを発見した探偵は張込みを続けるうちに彼女に惚れてしまい、主人公には適当な嘘をついて姿をくらましてしまう。気がつけば、メアリーの周囲には彼女に好意をよせる奇妙な男たちばかり。タブー破りのお下劣コメディの第一人者、ファレリー兄弟が脚本監督、出演はキャメロン・ディアス、マット・ディロン、ベン・スティラー。

ジム・キャリーの『マスク』でデビュー後、『ベストフレンズ・ウェディング(My Best Frined’s Wedding) 』でジュリア・ロバーツを喰って人気急上昇のキャメロン嬢が初の単独主演。共演に撮影当時は実の恋人であったマット・ディロンと、『リアリティ・バイツ』などの監督もこなす才人ベン・スティーラーを配したロマンティック・コメディ・・・・なわけがない。

なにせ、ファレリー兄弟の映画だから。

この兄弟の手にかかると、以前の作品である『Mr.ダマー』や、『キングスピン』を見れば分かるように、特に良識ある人でなくても普通は躊躇するようなネタを平気でかましてくるからヤバい。本作の魅力は、そういう下劣でナンセンスなギャグが、一応「ロマンティック」コメディとして成立する範囲内でごった煮になっているところだ。爆発的なロングランヒットは、これまでの彼らの作品には近寄りもしなかった別の観客層にもアピールする作品になっていることの証明であろう。

まるで小学生の悪ふざけ、普通なら辟易とするような幼稚なギャグ。それも、ここまで徹底し、突き抜けてしまうと並ではない。どこか距離を置いて眺めていた観客ですら、笑うほかない瞬間。例えば、ベン・スティラーが不幸を被るシーン。普通ならさっさと話を進めてしまうところで、2度3度、追い討ちをかけるようにしてしつこく迫る。このクドさ。ハリウッド映画では配慮した描き方がされるペットの犬に対する不謹慎ともいえる扱い。Oh my goxxx と叫びながら、唐突な出来事にショックを覚え、笑わずにはいられないビジュアルに吹き出す。観客の許容範囲を試すかのように挑発的で大胆。それゆえの新鮮さ。

しかしなんといっても、本作の成功はキャメロン・ディアスなしには語れない。タイトルどおり、彼女には何かがある。
これが演技だか地だかわからないところも魅力だ。

彼女の演じるメアリーときたら、「ギブスをはめて」いたり「歯の矯正装置をつけ」ている人がスキという、妙にフェティッシュなご趣味の持ち主で、少々間抜けな上、簡単に人を信じてしまい、いつも「何も知らないのは彼女だけ」状態になってしまう困った人という、特異なキャラクターだ。

そんな女性に誰もが虜になるような魅力がある、という設定。そこに説得力を持たせられるのはキャメロン・ディアスならではだろう。彼女が騒動の真ん中にいると差別ネタや下劣ネタ、さらには動物虐待までも、悪意がないただのドタバタに見えてくる。この不思議な個性はいったいなんなのか。これからスターに昇りつめようとしている美人女優が、こんなヘンな役を引き受け、シモネタも含め、嬉々として演じている。カラッと陽性な魅力。この1本で、彼女の躍進は約束されたといっていい。

ファレリー兄弟の異様な笑いのセンスが、これ意外にありえないキャスティングの妙で活きた、類まれな変則ロマンティック・コメディ。これが意外や何度繰り返して見ても、笑わずにはいられない。

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