7/20/1998

Parent Trap

ファミリー・ゲーム 双子の天使(☆☆☆☆)。

サマーキャンプで偶然であった双子の姉妹が自分たちの出生の秘密に気づくや、両親をなんとか結び付けようと作戦を練る。ドイツのケストナー原作『2人のロッテ』を現代風に焼き直した、というより米国ではディズニーが過去に作った同名 (Parent Trap) 映画のリメイク、というほうが通じるようだ。主演は離婚した両親役でデニス・クエイド、ナターシャ・リチャードソン、双子をひとりで演じるのがリンジー・ローハン。製作・監督は、チャールズ・シャイア&ナンシー・メイヤーズ夫妻。

実際、何も目新しいことがない作品ではあるが、実に手際良く、テンポよくまとめられており、とても楽しい作品である。こんなに楽しいとはある意味予想外だったので、思わぬ拾い物だ。家族で観るのに最高の作品じゃないだろうか。子役のリンジー・ローハンが最高に可愛いらしく、映画は彼女の輝きと魅力をきちんとフィルムに焼き付けている。原題風のアレンジも巧みで嫌味がない。

チャールズ・シャイアとナンシー・メイヤーズは、スティーブ・マ-ティンを主演にした『花嫁の父』で、かつての名作を現代に甦らせて大ヒットさせたことで有名である。これまでのフィルモグラフィをみても、もともと、ちょっと古風な作品を好みにしているのだろう。このチームのそうしたセンスがクラシックな作品のリメイク・再生にうってつけだったんじゃないだろうか。

主役の双子の姉妹は時代を反映して、一人の子役が二役を演じ、ブルースクリーンなどを使って合成する手法で作られている。そして、この子役、実に演技が達者なのだ。彼女が演じているキャラクターは、ロンドン暮らしでイギリス英語をしゃべる女の子と、カリフォルニアのワイン農場で暮らす女の子。この2人がいまだ見たことのない父親・母親に会うために入れ替わりをするのだが、服装や髪型、ピアスなどの小道具にばかり頼らず、言葉遣いやアクセント、身のこなしで二人のキャラクターをきちんと演じ分けてしまうのである!そばかすだらけの恐るべき子役がこの映画の最大の魅力であり、収穫である。この子が今後、どんな活躍を見せてくれるのかも楽しみだ。

双子の姉妹の活躍をひとつの柱とするなら、クエイドとリチャードソンのロマンスがもうひとつの柱だろう。電撃的な恋愛の末結婚したが、方やファッションデザイナー、方やワイン農場主、価値観の違いがおおきく,結果的に離婚してしまった夫婦。この二人の離婚と、結果的に12年ぶりに寄りを戻すプロセスは、「家族向けのディズニー映画」の制約はあるにしろ、丁寧に扱われているように感じる。

コメディパートを担うのは、ワイン農場の家政婦とロンドンの執事。こういった脇役への目の配り方、役割の振り方が絶妙に巧く、登場した人物を無駄なく使い切っている脚本が素晴らしい。一方で、デニス・クエイドが結婚を考えていた若い女性を単純な悪役として描いているあたりは、作品の性格を考えると致し方ないことだろう。

ファミリー映画とバカにするなかれ、丁寧に作られた良質の映画は、誰が見たって楽しい物だ。本作は、それを教えてくれる。(1998/7)

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