10/02/1998

What Dreams May Come

奇蹟の輝き(☆☆☆)

不覚にも何度か目頭を熱くさせられた。生と死の狭間を描く異色作である。『丹波哲郎の大霊界』シリーズの笑えないヴァージョンではあるのだが、死んだら驚いた、ってのはこちらも同じだ。

原作はもはや説明のいらないSF作家、リチャード・マシスンで、これをロナルド・バスが脚色、『エイリアン3』の脚本難航中に宗教色を持ちこんだことで有名な男、フレッド・ウォードの監督作品である。ダンテの「神曲」をやろうというのが趣旨らしい。大それたことを考えるものだ。

幼い娘と息子を失い、今度は自らが事故死する主人公。気がつくと、そこは死後の世界で、イマジネーションが現実化したような奇妙さと美しさを湛えていた。一方、現実社会に一人残された妻は、絶望の余り自殺をとげてしまう。主人公は、家族愛のために天国と地獄を駆け巡る。

主演には『グッド・ウィル・ハンティング』でアカデミー助演男優賞を受賞したばかりのロビン・ウィリアムス。共演はキューバ・グッディングJR、アナベラ・シオラ、そしてマックス・フォン・シドー。

この映画、最初に異色だと述べたとおり、男女の幸せな出会いと結婚を見せた後、子供二人を交通事故で殺してしまうという驚きに続き、4年後に飛ぶと、不幸を耐え忍び乗り越えつつある夫婦の姿を見せながら、ある記念日のために妻の元へと車を走らせる夫(主人公)が事故に巻き込まれて死んでしまうという、まあ、尋常ではない幕の開け方をするのである。

しかも、事故に巻き込まれた主人公が死ぬシーンは壮絶だ。事故に巻き込まれ、人助けをしようと車を飛び出したところ、スリップしてきた別の車が頭上から降ってきて下敷きになるのである。ここは映像表現としてもちょっとショッキングで、インパクトがある。

しかし、こんな始まり方をするのにかかわらず、この作品は何故だか「ハッピー・エンド」で幕を閉じるのである。なんじゃそりゃ?と思うだろう。いや正直、この奇天烈な脚本に金を出す映画会社は偉いと思うよ。

死後の世界を油絵の中に入り込んだような表現で見せる映像、そしてそれを実現しているVFXが見ものである。黒澤明の『夢』にあったゴッホどころではない。テリー・ギリアムが『バロン』でやったような、動いている絵画のようなイメージの氾濫。嵐の海から亡者の無数の手が伸びてくるような東洋的なイメージも取り込み、映画の背景という背景を埋め尽くしている。これは、他では観たことのない独創的なものだ。

キャスティング的には、本当に多作なロビン・ウィリアムズには新鮮味を感じなかったのだが、十八番というか、安心してみていられるところはある。キューバ・グッディングJr は、ちょっと面白い使い方をされていて、これがストーリー上の「ひねり」になっているのがね、ああ、そんなやり方があったかと、驚きを感じさせられた。

それにしてもなんと言う映画だろう。家族が霊界で再会する話。それだけのことだ。それほど出来がよいわけでもないのに、不思議な感動があり、忘れがたいイメージがある。ともかく、これはものすごく感動的な「怪作」である

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