5/07/1999

Election

ハイスクール白書・優等生ギャルに気をつけろ(☆☆☆★)

とある高校での学生会長選挙をめぐる狂騒とその顛末を描く、ブラックなハイスクール・コメディである。製作はMTV。出演はリース・ウェザースプーン、クリス・クライン、マシュー・ブロデリック。トム・ペロッタの原作をもとに、これが3作目となるアレグザンダー・ペインが脚色と監督を手掛けた。

上昇志向と押しの強い超優等生の女子生徒に、対立候補もなく無風に思われた選挙戦。この女生徒との「不適切」な関係で人生をフイにした同僚を思い出した生徒会の顧問が、対立候補を擁立しようと画策したことで、思惑の異なる候補者3人と顧問の教師の私生活を巻き込んだ泥仕合になる、という話。

これが、予想以上に面白い。アメリカの高校生活の一断面をこういう切り口で切ってみせるのはユニークだ。

中心になる数人の登場人物の視点を切り替えながら語っていく手法の歯切れ良さと、絶妙の編集のリズムも心地よい。ギャグのネタが少々泥臭くどギツい感じがするが、そもそも、ギャグで笑わせてオシマイ、という映画でもない。民主主義の雛形を教えるはずの選挙を舞台にしながら、良かれと思って介入した教師と、あまりにも極端な主人公のキャラクターを中心にして、あらぬ方向に転がっていく物語に皮肉な面白さがあり、物語の幕切れはシニカルだ。

監督が自ら手がけた脚本は、キャラクターがよく描かれているが、それを演じる俳優たちも怪演といっていい。

主人公を演じるリース・ウェザースプーンは上昇志向の強いキャラクターを好演。ヘン顔を恐れぬ体当たり演技でもあって、可愛いだけのスター女優とはひと味違う根性を感じさせられる。前作『クルーエル・インテンションズ』で演じた金持ちのお嬢様より、今回のような役のほうが個性的な風貌に似合っている。『Overnight Delivery』という、なんのことはない映画でヒロインを演じているのをみたときから贔屓にしているので、今後の活躍が楽しみである。

教師役はマシュー・ブロデリック。いや、マシュー・ブロデリックといえば、かつての青春スターであり、何をやってもうまくいっちゃう「フェリス・ビューラー」なのであるが、ここではそんな面影もどこへやら、何をやっても裏目に出てしまう情けない教師役がはまっている。こういうキャスティングは、当然、「フェリス」を踏まえてのことだから、それ自体に毒を感じずにはいられない。ブロデリックは、小心者の善人が、ふとしたきっかけ身を滅ぼしていく姿で哀れみと笑いを誘うのだが、最後には見るからに悲惨な容貌になってしまい、そこまでいたぶらなくても、と可哀想になってくる。この監督、かなり意地が悪い。

単なるハイスクールものと馬鹿にするなかれ。劇場で公開されないかもしれないが、追いかけてみる価値のあるエッジの効いたコメディ映画だ。オススメ。

0 件のコメント:

コメントを投稿