5/21/1999

The Love Letter

ラブレター/ 誰かが私に恋してる?(☆☆☆)

マサチューセッツ州の小さな海辺町で繰り広げられる、三角関係の物語である。ある日配達された手紙のなかに混ざっていた1通の熱いラブレター。誰が書いたのか、誰に充てたもののかも判らない。この手紙のせいで翻弄される主人公を演じるのがケイト・キャプショーで、製作を兼任。監督はハリウッド・デビューのピーター・チャン。共演にトム・セレック、トム・エヴェレット・スコット、グロリア・スチュワート、エレン・デジャネレスなど。

意地の悪い見方をすればこうなる。『インディ・ジョーンズ魔宮の伝説』以外にはぱっとした役がなく、むしろスピルバーグの妻としてよく知られるケイト・キャプショーが、夫のスタジオであるドリームワークスで自らプロデュース。盛りを過ぎたとはいえ男臭いトム・セレックと一回りは若いトム・エヴェレット・スコットの両方から恋焦がれるオイシイ役どころ(しかも後者とはベッドを共にするシーンまであったりする)。

まあ、しかしだ。これを自分で監督しようとせず、香港の俊英ピーター・チャンを連れてきたあたりは幸いといえようか。『月夜の願い』『金枝玉葉』など、こぢんまりとしたロマンティック・コメディを得意とするこの監督に比較的よく書けた脚本を任せたおかげで、可愛い作品に仕上がっている。

宛先不明・差出人不明のラブレターに小さな町の人々が翻弄され、それをきっかけにいくつもの勘違いカップルができるドタバタかと思えば、結局は主人公の三角関係もの。前半の笑いのセンスが少々泥臭いが、"The Love Letter"とは騒動のもとになった手紙のほかに、別の手紙のことも意味していることが明らかになってくると、俄然ロマンティックな色が濃くなってくる。演出も次第に落ちつきを取り戻し、見ている方としても一息つける。

久しぶりに見るケイト・キャプショーだったが、小さな海辺町で暮らしている普通の人のリアリティはあって、若い男に言い寄られてくらくらっときてしまうあたりにも説得力があった。『イン&アウト』ではあっと驚く役どころだったトム・セレックも、ギラギラした感じがなくなったぶんだけ、普通の役がやれるようになったというのが発見だ。現実味があるのは良いのだけど、いかんせんそれが地味さになってしまっているのは大きな欠点。このキャスティングではなかなか一般観客の興味は引けまい。

もう一つの問題は、主人公の母親をふくめて俳優の実年齢と役柄の年齢がいまひとつしっくりこないのだ。そのあたり、映画のマジックでうまく誤魔化しているともいい難く、多少疑問が残った。気のせいだろうか。

実際にマサチューセッツ州の避暑地、ケープコッド近辺で撮影されただけあって、町の雰囲気や表情がよく出ている。とりたてて持ち上げるような作品ではないけれど、そこそこ楽しめる出来映え。堅実な仕事をしてみせたピーター・チャンに、今後もいい仕事が回ってくることを期待したい。

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