5/06/1999

Life

エディ&マーティンの逃走人生(☆☆)

大恐慌の後遺症も癒えていない頃のNY。音楽が溢れる黒人クラブで偶然出会った2人の男がアルコールの運び屋をすることになるのだが、その道中、黒人差別の風潮が色濃く残るミッシシッピ州で殺人容疑の濡れ衣を着せられ、終身刑の判決を受けてしまう。刑務所で強制労働に従事しながら一生を送ることになった2人の運命やいかに。

・・・というドラマを、エディ・マーフィとマーティン・ローレンスの2枚看板で見せるのが本作である。エディ・マーフィとマーティン・ローレンスは、過去に一度、『ブーメラン』で共演している。そのころを頂点として、「落ちてきた」エディ、主演作も増え、登り調子のマーティンが対等に共演するのである。

当然、この二人が主演なのだからコメディ・タッチの作品にはなるが、しかし、2人の名前から期待されるドタバタはここにはない。ドラマとしては、中途半端な笑いも邪魔してか、他の刑務所ドラマにはかなわない。どうにも、そのサジ加減が中途半端に思えて、笑うにせよ、感動するにせよ、なかなか難しい。

もちろんプロデューサーまでつとめたエディの心意気はわかる。第2次大戦前の南部、おなかが空いてふと立ち寄ったダイナーで黒人客はお断りだと云われるひと悶着。羽振りの良い黒人をなぶり殺しにする白人の警官。結果的に黒人を安い労働力としてこき使う構図になっている刑務所。自らの知名度と笑いというオブラートに包んで、エディがここで提示してみせるのは、現代アメリカにおける黒人の歴史の一断面なのである。

エディ・マーフィとマーティン・ローレンスの息は合っている。が、いかんせん笑いもドラマも互いに遠慮しすぎているのだろう。二人の黒人受刑者の葬式と埋葬から始まる物語なのだから、脱走を繰り返しては失敗する二人の姿が滑稽であればあるほど憐れみや哀しみを誘う、という境地に辿りつけたのなら、あるいは、トラジック・コメディとして成功したのかもしれない。だが、現実、そこまでの力のある映画にはなっていない。

最大の見所は、特殊メイクの達人リック・ベイカーがエディとコンビを組んでみせる「老人メイク」だろうか。この2人、『星の王子NYへいく』『ナッティ・プロフェッサー』でもエディ七変化を見せてくれたが、今回もなかなかすごい。面白いのは、メイクそのものだけではない。同じメイクを施しても、マーティン・ローレンスは彼が老けメイクをしているようにしか見えないが、エディはそこに老人になったキャラクターを見事に作ってみせるのである。この演技力、いや、「芸」の差は大きいな。

監督のテッド・デミは、『ビューティフル・ガールズ』があった。あれも好感はもてるが、今一つ焦点が定まらない作品だったな。今作は話が全部上滑りして表層的。『ハーレム・ナイト』の失敗で懲りたのかもしれないが、これならいっそのことエディが自分自身で監督した方が良かったのではないか。

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