5/01/1999

The Mummy

ハムナプトラ 失われた砂漠の都(☆☆☆)

伝説の「死者の都」への道を知るという主人公を道案内にして、好奇心旺盛な図書館司書の女性とその兄を加えた一行が旅に出るが、道中、都に眠る財宝を目当てにした連中や、都市の秘密を守るかのごとく襲撃を繰り返すミステリアスな民族集団との遭遇。最後には呪われし神官インホテップとミイラ軍団と対決する羽目になる。出演はブレンダン・フレイザー、レイチェル・ワイズ、ジョン・ハナら。

ミステリアスな砂の顔をあしらった大作感漂ようポスターが随分前から劇場に貼られていた。かつて、怪奇映画で鳴らしたユニヴァーサルの製作で、『ミイラ再生』をリメイクする、という。

しかし、そんな大義名分のもと作らた映画は「好き勝手に翻案された、インディアナ・ジョーンズ風の冒険アクション」だった。なんじゃそりゃ。でも、古典的なミイラ映画じゃ、客は入らんよな。脚本・監督は、前作『ザ・グリード』で、一部の映画ファンを狂喜させたスティーヴン・ソマーズだという。いつのまにやらすごい出世である。

この映画、「インディアナ・ジョーンズ風」といえば聞こえは良いが、まさに、それをお手本にした安っぽいコピーだ。全てはどこかでみたことのあるシーンのツギハギで、何一つ新しいところはない。でも凡百のインディアナ・ジョーンズものまね映画と違うのは、作り手の過剰なまでのサービス精神と、有無を言わせない物量なんだろうと思う。

スティーヴン・ソマーズの演出はどちらかといえば荒っぽくて乱暴なところがあり、お世辞にも上手い監督じゃないと思うのだが、それでも、観客を喜ばせようとするエネルギーは伝わってくる。今回は予算も潤沢だったのだろう、手を変え品を変え、物量で攻めてくる。このへんで一区切りという限度を知らず、牛丼特盛に卵と豚汁までついてきて、食べ終わったところにカレーライスが出てくるような映画になっているのだ。

しかし、主演が立派な体格と整った顔をしていながら、抜群のコメディ・センスを持ったブレンダン・フレイザーだからして、普通のアクションヒーローにはならないし、だから映画のノリも、真面目にやっているのか、ギャグでやっているのか分からない、コミカルで軽いノリになっている。それが徹頭徹尾陽性な本作の個性であろう。

あと一歩間違えば、バカ映画のたぐいになる、そういう危うい一線上で、なんとかサマー・ブロックバスターとしての体裁を保っているのが面白くもあり、つまらなくもある。いっそ、もっとバカ側に振り切れていたら、もっと面白かったかもしれない。

ILMが砂を使ったエフェクトで力量を発揮。たしかにこういうのはCGI、デジタルの効果でなければ映像化が難しいところだろうし、それにしたって、相応に技術的なハードルも高いんだろう。ILMのなかでも「スターウォーズの新作に入れてもらえなかった」スタッフたちが執念と意地でつくりあげたという。

巨匠ジェリー・ゴールドスミスがいつものように入魂のアクション・スコアを鳴らしていて、最初からこれを聞いてればこの映画が「怪奇映画」だとは思わないはず。本編が終わったあとで流れるエンド・クレジットがヒエログリフをモチーフにしてちょっと新鮮、お洒落だった。

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