10/11/2008

Get Smart

ゲット・スマート(☆☆☆)

ネタ切れのハリウッドが引っ張り出してきたのは、往年のテレビ・ドラマ『それゆけスマート』。テレビで放送されていた件の作品をリアルタイムで見ていたのは私よりも上の世代だが、とはいっても、同じ役者が主演して作られた劇場版だという『0086笑いの番号』は記憶に残っている。爆発すると繊維が消えてなくなるヌード爆弾をめぐってのバカ騒ぎ。調べてみるとこれは1980年になって作られた作品だというから、なんだ、そんなに古くないのね。どおりで見たことがあるはずだ。このシリーズ、馬鹿げたことを真面目くさった顔でやってのけ、人を喰った感じでクスクス笑わせるのが特徴である。シリーズ・クリエイターにメル・ブルックスが名前を連ねており(本作にもクレジットが残っている)、まあ、ああいうテイストなのね、とわかるだろう。

主演にスティーブ・カレルを迎えてすべてを一新した本作。競演にアン・ハサウェイ、ドゥウェイン"ザ・ロック"ジョンソンを並べ、TVで人気が出たばかりのマシ・オカなんかも脇役として登場。冒頭では顔を見せない悪役だが、特徴的な声でそれと分かるテレンス・スタンプも出ている。監督はここのところアダム・サンドラー組でよい仕事をしていたコメディ専科のピーター・シーガル。まあ、大きくはずすことのない無難な人選だろう。実際、これはこれでバカらしくも面白いネタを満載した水準作だと思う。

もちろん、いま「馬鹿げたことを真面目くさった顔でやってのけ」て一番面白いのはスティーブ・カレルだと思われるので、このキャスティングでリメイクをやろう、という企画の勝利だといえる。背広をきて真面目な表情をしていれば十分に普通の人で通用しそうな、少し哀しげな目をしたこの男の、ちょっとしたズレから増幅していく違和感をベースにしたお笑いの質が、オトボケ系の本シリーズにぴったりだ。それに、目と口がおおきいとはいえ、とっても美人なアン・ハサウェイを、「全身整形なので身元が割れずにすんだ」という設定のキャラクターに充てるというギャグ、それを堂々と演じてみせるハサウェイはクールな人だと思う(個人的には、これが鑑賞決定要因#1)。

ギャグの密度はそんなに高くないので、ナンセンスギャグの波状攻撃的な作品を期待すると肩透かしを食う。どちらかといえば、一昔前な感じのオーソドックスな作りが、微笑ましい。ちなみに、ほんわか和み系のギャグといえば、思わぬところで登場するビル・マーレーが最高におかしい。ぜひぜひ、彼を見逃さないで欲しい。ビル、あんた、やっぱり最高だ。続編にも出てくれるよね?

クライマックスがドルームワークスの『イーグル・アイ』と同じ某ヒッチコック作品を引用したもので、まあ、超有名作の超有名ネタゆえに被ってもおかしくないのだが、数年前にフジテレビな映画でも引用されていたがゆえ、またですか!と思わないでもない。コメディに引用やパロディはつきもとはいえ、意外にネタもとにできる作品が限られているのかもしれないという気がした。

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