9/28/2008

Nights in Rodanthe

最後の初恋(☆☆★)

ダニエル・スティール原作で、過去にも同じ作者の『メッセージ・イン・ア・ボトル』をプロデュースしたことのあるデニース・ディノヴィ製作、共演3度目のおなじみリチャード・ギア&ダイアン・レインという布陣で作られたジョージ・C・ウルフ監督作『最後の初恋』。もう、想像以上のことはおこらないし、想像以上のものが見られると期待するほうがおかしい、絵に描いたような「中年ロマンス」なので、そういうのが嫌いな人は劇場に近寄らないほうがよい。(云われるまでもないか。)結ばれてハッピーエンド、ともいかないほろ苦さを用意して涙を絞る。

そう、いわゆる、"chick flick" であり、かつ、"teer jerker"って、みんなが馬鹿にする類だ。まあ、馬鹿にされても仕方がない。そういう映画なんだもの。

ふたりが出会う海辺の宿の佇まいがすごい。嵐がきたら一発で吹き飛びそうなものだが、そこはフィクションということなのか、もしかしたら実際に建ってるのか知らないが、わけありの男女が嵐の近づく海辺のこんな宿で一緒にいたら、そりゃなんかがなくちゃ不自然だ、というのを、圧倒的説得力で見せるセット(なのか本物かは知らないが)。舞台はノース・キャロライナ、夏休みに過ごすにはなかなか素敵なロケーションかもしれない。

脚本は舌足らずなのに、なんとなく説得力のあるカップルになってしまうギア様とダイアン・レインはさすが、キャリアの違いを感じさせてお見事である。しかし、それを言い出したら、やっぱり脚本は舌足らずなのに、そのキャラクターの存在そのものに圧倒的な説得力を与えてしまうのがこの人、恐るべし、スコット・グレンだ。彼の役どころは、医師であるリチャード・ギアが医療事故で死なせてしまう女性と長年連れ添った夫だ。要は、リチャード・ギアの心の傷を説明するためだけに設定された人物なのだが、スコット・グレンがこのもの静かな田舎のおっちゃんを演じると、あら不思議、台詞にない心の声まで聞こえてきて、なんかよく分からない行動も納得させられてしまうのである。この人、すごく好きな役者なのだが、最近、へんな役やちょい役ばっかりで実に惜しい。

劇場作品としてはデビュー作となるジョージ・C・ウルフだ。期待していなかったが、終盤、ちゃんとわかっている演出を見せてくれる。そのシーン、ダイアン・レインが、ある出来事があって投函されることのなかった手紙を読むところなのだが、凡庸のなかでも凡庸なやからだと、ダイアン・レインが手紙を読み始めると同時に、手紙を書いたリチャード・ギアの声で内容の朗読が始まり、観客の涙をしぼりつつ、ダイアン・レインも泣く・・なんてことをやらかす。しかし、この監督はベテランの演技人であるダイアン・レインを信じ、彼女の演技をたっぷりと楽しませてくれた。こんな具合だ。手紙を手に取ったダイアン・レインが、静けさの中、それを読み始める。読み進む。やがて、こらえきれなくなった感情が胸の奥からあふれでて・・・って、いや、まぁ、そもそも陳腐の塊のような作品なので、そこのところは致し方ないのだが、これをじっくり、腰をすえて、粘って、静けさの中で見せた。ワンカット。こういう瞬間、映画を感じる。ちょっとした幸せを感じる。まともな脚本がくれば、もうすこしまともな作品を撮れる人かもしれない。

蛇足。その昔、予告編でコーラ・ポールのキャッチーな唄ががんがん流れていたのに、それが本編では一切使われていない曲で、当然サントラにも収録されていなかったため、ちょっとした騒動(?)になった映画があった。ご存知、『シティ・オブ・エンジェル』(ワーナー)だ。今回、ワーナー大プッシュ中のダニエル・パウダーとやらの歌が「テーマ(イメージ?)ソング」とやらで、予告編でがんがん流れていたけれども、「どうせ使われていないんだろ」とたかをくくっていたら、あの事件(?)に懲りていたか、ワーナー。ぐぉ、全く意表をつかれたぜ。日本版だけエンディング音楽を差し換えて、突如ダニエル・パウダーがっ!英語だったらいいっつーもんじゃないでしょ。『P.S. アイ・ラブ・ユー』で徳永英明が流れた衝撃と同じレベル。日本語かどうかなんか関係ない。おまえら、勝手に映画をいじるなっ!(怒)

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