6/02/1998

Godzilla (U.S.)

GODZILLA ゴジラ(☆)

南太平洋で日本の漁船を襲った謎の巨大生物は、フランスの核実験で放射能を浴びて異常な進化を遂げた巨大な爬虫類であった。繁殖のため地球をどっちに回ったのか知らないがわざわざNYに上陸した怪物は米軍とチェイスを繰り広げながら街を破壊、マジソンスクエアガーデンに無数の卵を産みつける。

東宝から権利を買ったソニー・ピクチャーズが製作・監督に『インディペンデンス・デイ(ID4)』のコンビ、ディーン・デブリンとローランド・エメリッヒを起用して製作した米国版ゴジラ。音楽のデイヴィッド・アーノルドも「ID4」組である。出演はマシュー・ブロデリック、ジャン・レノら。

予測はできたことであるが、これが全くIQの低いガサツな作品なのである。別に日本のゴジラに思い入れもないので、<大イグアナNYに現る>だと思って観ていたのだが、この幼稚さ、低脳さ加減は並みじゃない。

まず怪物に魅力がない。「大怪獣が街を破壊する映画」を期待すると、「大イグアナを追いかけて、はずしたミサイルで人間が街を破壊してまわる映画」だったりするのも問題だが、なんといってもこのクリーチャーの、デザインのみならず、動きにすら全く愛敬がないのは致命的である。生物的にしたかったというが、人間の妊娠検査薬で繁殖期だと分かることが「生物的」なのではない。作り手に、この怪物に対する愛情が欠落しているのが一目瞭然である。

では人間さまの方はどうかというと、どいつもこいつも食われて死んでもらって構わないと感じるほど魅力に欠けるキャラクターばかりだ。口にする台詞ときたら幼稚園の学芸会。中学生でも書きそうなダイアローグ。囮につかう魚の山を見て"A lot of fish."というマシュー・ブロデリック。カットの切り替えに当たる演出の間は明らかに笑いを狙っているのだが、こんな台詞をきかされてどう反応したら良いのか。こんな役を演じるブロデリック自身が間抜けに見えてくるのが悲しい。

『ジュラシック・パーク』もどきだといわれることを承知で持ってきたにちがいない後半の見せ場だが、このあたりも観客が期待したはずの「怪獣映画」から完全に逸脱しており、敢えてモドキをやる意味がわからない。ID4で馬鹿にされた憂さ晴らしをしたいのか、有名な映画評論家(シスケル&エバート)に似たキャラクターを出してくるあたりの幼稚な負け惜しみ。

オープニングのシークエンスと、うなされた日本の漁師が巨大イグアナをゴジラと呼んだことからゴジラという名前になってしまうエピソードは素直に面白かったが、それ以外は全く見るべきところのない作品である。これならば、以前、ゴジラを撮ると噂されたが予算の折り合いがつかず降板したヤン・デボンが撮った『ツイスター』の方が、まだ怪獣映画の変種として面白い(というか、わりと好き)。(1998/6)

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