12/11/1998

Jack Frost

パパは雪だるま ジャック・フロスト(☆☆☆)

ミュージシャンとしての仕事柄、長期の旅も多く、息子と一緒の時間が取れない父親が、クリスマスの日に家族のもとに向かって車を走らせている途中で事故死してしまう。翌年のクリスマス、息子が作った雪だるまに憑依するかたちでこの世に戻ってきた「父親」は、沈んでいた息子と楽しい時間を過ごし、勇気付け、あの世に再び帰っていく。

クリスマス向けのファミリー。ピクチャーとして企画された、ファンタジー。ケリー・プレストンが母親役を演じ、雪だるまになって現世に復活する父親はマイケル・キートン。監督はトロイ・ミラーという人で、最近ではアカデミー賞のオープニング・フィルムなどを手がけているらしい。見どころである「動く雪だるま」を、「マペット」で知られるジム・ヘンソン・スタジオが担当している。

アメリカの雪だるまは「スノーマン」であって、「達磨大師」とは関係ない。故に、雪の玉を3つくっつける。頭と胴体とお尻、かな。これがヘンソン・スタジオのマジックで、命を吹き込まれる。途中でばらばらになったりするなど、ひとしきり笑わせてくれるのだけど、日本のダルマより動きにバラエティがつけられるよなぁ。

CGなどを使って動くスノーマンは子供向けのお楽しみとしても、この作品の背骨はしっかりと作られていて子供だましになっていない。アメリカ映画はこういうファミリー物を手抜きせずにつくる良い伝統を持っている。

ストーリーテリングに無駄がなくてスムーズである。例えばマイケル・キートンが雪道で事故にあったあと、遺体回収とか、悲しむ家族とか、葬式とか、そういう普通だったらありそうなシーンを全部すっ飛ばして「1年後」とテロップを打つ。このセンス、いいなぁ、と思う。そのあと、きちんと1年間という時間の経過とその重さを見せてくれるからね。

中盤、雪だるまと主人公が繰り広げるちょっとした冒険は、007のアクション・シーンといったら大げさだけれども、ソリやスノーボードをつかったスピーディな見せ場になっていて、わりと気が利いた笑いのとり方もするので、感心する。

ホロっとさせるシーンの作り方も巧いんだ。主人公の「仇」のようなガキ大将が出てくるのだけれど、彼が主人公と同じく父親がいない、ということを、途中でさりげなくみせておき、クライマックス近くで「No Dad より Snow Dad の方がマシだもんな」と主人公に協力してみせる。台詞も笑わせるが、こういう展開には思わず拍手したい気分にさせられる。

マイケル・キートンやケリー・プレストンなど、大人の出演者に力みが無いし、子役たちからいい表情を引き出している。父親の職業をミュージシャンとしたことで、マイケル・キートンの灰汁の強さが不自然でなくなるんだよ。品行方正とはちょっと違った格好良さ(クール!)。 こういうの、男の子が理想とする父親像だろうね。

父親の霊が乗り移った先が「雪だるま」じゃ、そのうち溶けること、すなわち、再び別れが来ることはご推察の通り。だが、この映画、単純に溶かしてしまうんではなくって、「雪が解けないところに連れていこう」という主人公の行動が積極的で、アメリカ的だとびっくりした。いやぁ、そうくるか。

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