12/23/1998

The Mighty

マイフレンド・メモリー(☆☆☆☆)

難病もの、と先入観を抱いてしまうと、私なんかは映画館にいく気が失せてしまうのだけど、これはそんな定型に収まる話ではないので安心して欲しい。もっと、もっと豊かな物語なのだ。少年が難病であることは物語りの大きな鍵であるし、彼の行く末は敢えて言うまでもないのだけれど、そこから展開される物語が実に豊穣なのだ。

奇病・難病に侵され、小さいせむしの体を松葉杖で支えている少年と、体は大きいが頭脳は恐竜並みとからかわれる学習障害のある少年が出会い、冒険し、友情を育む物語である。片方は病気を抱え、片方は家族問題を抱え、、片方は天才的な頭脳を持ち、片方は学習障害を抱える。共通点はお互いに周りから疎外された身であること。

2人の出会いを「アーサー王と円卓の騎士」の本で始め、小さい少年を肩車して歩く大きな少年というのが、馬にまたがった騎士になぞらえてあるところがファンタジックで素晴らしい。

「フリーク(奇形)」少年を演じているのが、キーラン・カルキン、その母親役をシャロン・ストーン。ほかに、ジリアン・アンダーソンやジーナ・ローランズ、ハリー・ディーン・スタントンらが出演。監督はピーター・チェルソム、原作はロッドマン・フィルブリックの「Freak the Mighty」。

結局奇病に侵されて自由に動き回れない少年にとっては知識や空想の世界が全て。ファンタジックな中世の騎士物語は彼の心の世界の象徴である。端的なのはトレバー・ジョーンズのスコアで、この作品に不思議な広がりと味わいを付け加えている。中世の騎士が出てきたので咄嗟にテリー・ギリアムの『フィッシャー・キング』を思い出したのだけども、ジェフ・ブリッジスが(結局)聖杯の探索に付き合わされたように、こちらも図体のでかい学習障害の少年が騎士道の追求に付き合わされる展開。いや、だって、騎士を乗せた馬なんだもの、付き合わないわけにはいかない。

キーラン・カルキンが兄マコーレーなんか軽く吹き飛ばすくらいの名演技で、これまでただの子役だと思っていたこちらの認識を変えざるを得ない。そして、このキーランの演技が映画の中で浮いてしまわないのは、まわりがいずれ劣らぬ良い仕事をしているからだ。

例えば相棒を演じるエルデン・ラトリフの存在感、実年齢(20 !)よりも低い役に不自然さがないのが凄い。シャロン・ストーンの地味な存在感も印象的で、ここ数年は演技派への転換をはかっていたけれど、こういう脇役をきっちり肉付けして奥行きのあるキャラクターにできる実力はたいしたものだと見直した次第。いい女優だよね。これをきっかけに役に恵まれると良いのだけど。

少年の視点で撮っている演出には節度があって、いくらでも「泣き」に走れるのに抑制しているところが好感度高く、奇形少年との永遠の分かれも省略も効かせつつさりげなく完璧。第1章、第2章と本のページを繰るように語る方法も最初は「どうかな?」と思っていたけれど、それも物語上、わけがあってのことで、少年同士の友情をファンタジーとして昇華させるのに大きな役割を果たしていた。

作り手の知性を感じさせる、リッチで抑制の効いた素晴らしい作品。ぜひとも一見を薦める。

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