12/26/1998

Stepmom

グッドナイト・ムーン

ジュリア・ロバーツ演じる離婚歴のある写真家が主人公。今は2人の子供を持った男と生活を共にして、健気に子供たちの継母を務めようとしているのだが、子供たちはスーザン・サランドン演じる実母の方に懐いており、しっくりいかない。もちろん、主人公と子供たちの実母とは、互いのライバル心もあっていつもギクシャクしているのだったという設定で幕を開けるホームドラマ。監督は、クリス・コロンバスだ。

クリス・コロンバスという名前を聞くと、私なんぞの世代だと、『グレムリン』や『ヤング・シャーロック』で業界に現れた若き脚本家のイメージがあるが、いまじゃ『ホーム・アローン』の監督、だよな。監督デビューはエリザベス・シューが主演した『ベビーシッター・アドベンチャー』。なかなか楽しい作品だった。結果的な話かもしれないが、これまで一貫して「ファミリー」や「子供」を描いてきた人だというのは事実である。そして、子供から生き生きとした自然な表情を引出すのに長けていて、家族を見つめる視線が優しく、暖かい。

本作における人物配置と物語の構造は、意識してかせずしてか、同じクリス・コロンバスの『ミセス・ダウト』とよく似ている。『ミセス・ダウト』では離婚家庭に家族の隙間を埋める別の存在(実は父親)が現れて、何もかもうまくやって子供の信頼を勝ち得てしまう、という話だった。今回は養育権を持った夫と、新しい妻のところに夫の前妻が現れて、子供の心を独占してしまう。

だが、その先がドタバタ劇にならないで、泣かせのドラマになるんだよなぁ。

ドラマに盛り込まれたテーマも盛り沢山である。「病に侵された母親と残された家族のドラマ」、「継母と実母の確執」、「継母と子供たちとの確執」、「家庭とキャリアの選択」、「複雑な形を持ったあたらしい家族像」・・・・よくもまあ、これを破綻させず、2時間強、ハリウッド調の軽やかで口当たりの良いファミリードラマに仕立てたものだと思う。

しかも、人気・実力ともに高い2大主演女優が共に製作総指揮に名前を連ねていて、ロナルド・バスを含めて6人ものライターが執筆に携わっている企画だからね。

今回の見せ場は、女優としての貫禄も含めてスーザン・サランドンがさらっている。いつものことながら、少し力みすぎのところがあるが、相手がスターのジュリア・ロバーツなんだから、力んでみせるのもよくわかる。ラスト・シーンで見せるジュリアが小娘にみえるほどの貫禄は、さすがとしか言いようがない。

大女優を前にして、一歩引いてみせた感のあるジュリア・ロバーツが、いつもになく良い演技である。才能にもキャリアにも恵まれていながら、ある男を愛したがために、その子供も愛そうと健気な努力(+どたばた)を見せる役柄は彼女にしては新鮮でもある。。賞レースに名前は挙がらないけど、最近、波にのっているんじゃないかな。

クリス・コロンバスは、いつも既成曲の使い方が上手いのだけど、今回もいい演出があった。「継母と子供たちの心が通い始める」ところを、そして「一度はギクシャクした実母と子供たちの関係が修復する」ところを、マーヴィン・ゲイの"Ain't No Mountain High Enough"に乗せて軽やかにみせるんだな。この映画が気に入ったら、この曲も気に入ることだろうと思う。

なお、邦題『グッドナイト・ムーン』は製作中の仮タイトルとして使用されていたものなんだってさ。

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