12/11/1998

Star Trek: Insurrection

スター・トレック 叛乱 (☆☆★)

日本では「新スタートレック」のタイトルで放映された、元々のシリーズの80年後、24世紀を舞台に展開される「StarTrek: The Next Generation」の映画版、第3弾。シリーズ通算では9作目。

オリジナルの劇場版のころから、「奇数番号の作品は内容も興行も劣る」というのが、スター・トレックにまつわるのジンクスである。実際、劇場版にしてはこぢんまりとした内容だったこともあり、興行は不発気味。いやはや。

お話はこんな感じ。惑星連邦に属しない種族と共に、「永遠に若さを保つことができる特殊な放射線の影響下にある惑星」を共同開発するプロジェクトが進められていた。しかし、その計画は、その惑星に住む少数の住民を力ずくで移住させることが前提であった。連邦のよって立つ「大原則 (= Prime Directive)」に反するこの「陰謀」を知ったエンタープライズのピカード大佐は、住民の権利を守り抜くために連邦の方針に反旗を翻す。

さて、前作が、目下連邦の最強の敵といえる「ボーグ」という種族とのバトルものであり、ヴィジュアルも暗かったことを受けているのであろう。「叛乱」という物騒なタイトルに反して、明るく、軽い作風になっているのが本作の特徴である。脚本は、シリーズの共同プロデューサーの一人、マイケル・ピラーの名義だ。

キャラクターの会話や行動がユーモアたっぷりに描かれていて、少しばかりのロマンスを交えつつ、民族自決の大原則・価値観を守るため、小悪党との局所的な「小競り合い」をするというのが本作のメインとなるプロットであり、TVシリーズのエピソードではともかく、映画版としては少々毛色が異なる1本になっている。

映画のたびに大きな戦争や人類存続の危機というのでは飽きもくるので、個人的にはそれほど悪く思わないのだが、2年に一度のビッグ・イベントとして楽しみにしていた向きには、TVの前後編もの程度のスケールでちょっと物足りないかもしれない。

今回の演出は、前作に引き続きジョナサン・フレイクス。「ナンバー・ワン」こと、エンタープライズの副長、ウィリアム・ライカーを演じている俳優である。フレイクスは以前より監督志望で、TVシリーズ出演中に技術を学び、その熱意を買われて何本か演出したのが監督としてのキャリアの始まりになった。なんといってもシリーズを知り尽くしているのが彼の強みだ。本作には、ファンが見てニヤニヤしたくなるようなシーンがいっぱい用意されているし、キャラクター同士の相互作用など、本作の特徴的なところを上手く引き出している。

ただ、フレイクスの演出は限りなくTVドラマ的なので、映像によるハッタリや、スクリーンならではのスケール感はない。これは脚本のせいばかりじゃないだろう。

ところで、本作は、『スター・トレック5』以来の特撮を担当してきたILMが、『スター・ウォーズ』の新作(!)のため忙しく、異なる特撮工房を使っているのだが、時代の流れか、シリーズで始めて、モデルを使用しない100%デジタルのVFXで作られた作品になった。見れば分かるのだが、宇宙船などの動きがあまりにスムーズで重量感がないので、ちょっとがっかりしてしまうかもしれない。それやこれやで、前作から登場している「エンタープライズE」を魅力的に描くショットが不在であるのは残念に思う。

お馴染みのキャストの他にF・マーレー・エイブラハムが適役を演じるほか、ゲスト・ヒロインでドナ・マーフィが出演。音楽も前作に続きジェリー・ゴ-ルドスミスが担当。何度か見たのだが、マンハッタンの劇場でみたSDDS方式の上映が良かった。音響の良い劇場で見ると作品のレベルが上がって見える。

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以下、スター・トレック好きのために少々補足。

本作が劇場で公開されている今、TVでは第3のシリーズ『ディープスペース・ナイン』が放映中である。この番組では、惑星蓮歩と「ドミニオン」と呼ばれる勢力との大戦争が勃発しており、決着がついていない。それと整合性をとり、数年前からDS9 のレギュラーになっている「ウォーフ」は、前作に引き続き「たまたま」居合わせたという設定でエンタープライズに乗船しているほか、ドミニオンの兵士であるジェム・ハダーが必要とする化学物質「ケトラセル・ホワイト」の合成技術の存在が、本作の背景設定として言及されているのである。もちろん、これを知らなくても、本編が理解できるような作りにはなっている。

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