9/24/1999

Double Jeopardy

ダブル・ジョパディー(☆☆★)

幸せな結婚生活に思われた。自家用ヨットでのロマンティックな1夜。しかし、夜が明けてみれば自分は血塗れになっており、夫はいない。保険金目当てに夫を殺害したとして6年間の服役。その間に、信頼していた女友達は預けていた息子を連れて消え、死んだはずの夫と暮らしているという衝撃的な事実を知る。

一度犯した罪で裁きを受けて刑に服した場合には、同じ罪で2度裁かれることはない、米国の憲法修正第5条。日本で言うなら、憲法39条でいう一事不再理の原則ですな。それがタイトルになっている「Double Jeopardy」で、作品の発想のもとになっている。変なカタカナ・タイトルなんかにせず、「一事不再理」とすればよかったんだよ。

つまり、夫を殺したとして服役した主人公は、実は夫が死んでいなかったという時点で免罪なのだが、自分を罠にかけた憎い夫を今度は本当に殺してしまったとしても、もう重ねて罪に問われることはないってこと。なぜなら、「夫殺しの罪」では既に裁きを受けているのだから。Got It ?

無実の罪をきせられる主人公はアシュレイ・ジャッド。その彼女が、追手から逃れつつ真犯人に迫るという筋立てだけみると、小粒な『逃亡者』のようである。共演がトミー・リー・ジョーンズだからなおさらだ。ただ、話の焦点は犯人探しというよりも、か弱い主婦が自立した強い女性に成長するところにある。なにせ、監督は『ドライビング・ミス・デイジー』のブルース・ベレスフォードだから、サスペンス・ドラマであると同時に、女性映画といっていいテイストの作品に仕上げてきている。まあ、予算もなかったんだろうけどさ。

そんなわけだから、見所はなんといっても主演のアシュレイ・ジャッドということになるだろう。無実の罪でわけのわからないまま刑務所に入れられ、息子に再び会いたい一心で自分を罠にはめた男を探す役柄は感情の起伏も大きく、やりがいのある役だったんじゃないか。なかなか好演、そろそろブレイクしてもいいんじゃないかね。

一方の共演、トミーリー・ジョーンズは、クレジットの順番はトップながら、完全な脇役。娘の写真をボロ車のサンヴァイザーに挟んでいたり、アルコール中毒ぽかったりと、いろいろなドラマを秘めていそうなのだが、脚本はそれらを匂わすだけできちんと突っ込まない。それこそ、『逃亡者』のジェラード警部補のイメージを利用するためのキャスティングだったんじゃないか。

ベレスフォードの演出は、ちょっとアカデミー賞監督とは思えないほど荒っぽくて、作品の格を下げてしまった。だいたい、冒頭で6年間の歳月の重みを見せることができていないので、話が軽くなってしまっている。その間の時間経過をみせる編集も雑で、あるシーンで息子画面買いに来たのを喜んでいて、次のシーンで、何ヶ月も面会に連れてきてくれないと嘆いているんじゃ支離滅裂だ。

一事不再理を知った主人公が俄然張り切ってしまい、『ターミネーター2』のリンダ・ハミルトンか、『ケープ・フィアー』のロバート・デニーロかというようにトレーニングを始めるところでは場内で失笑が起きた。唐突だってば。それでも、鍛えたはずの成果(=筋肉)をきちんと見せないんだから、この監督、何がやりたいのか分からないよ。

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