9/10/1999

Love Stinks

Love Stinks <未公開>(★)

恋に落ちた人気コメディ番組のプロデューサー。全てが女性主導で進んで行くかに見えたが、なかなか煮え切らない男にキレた女性が「結婚の約束を反故にされた」と法的手段に訴え、愛憎入り乱れる泥沼の争いに突入してしまうという話。 『フルハウス』のクリエイターであるジェフ・フランクリンによる初めての劇場作品で、脚本・監督を務めている。出演はフレンチ・スチュワート、ブリジット・ウィルソン、タイラー・バンクス、ジェイソン・ベイトマンら。

Love Stinks というタイトルがタイトルなので、 "This movie does not really stink, but sucks." といってみたくなった。そんな映画。300人程度のキャパシティがある劇場で、初日の夕方、自分以外に誰一人として観 客がいなかった。5ドルでもお釣りのくるマチネー料金だったから、なんか申し訳なくて。

でも、これは、つまらない。本当に。笑えないコメディである。

海外の映画は、なんらかの価値がなければ日本の市場に入ってこない。あらゆる角度から吟味して、本当にどうしようもない作品ってのは、そんなわけで、なかなか眼に触れることもない、はずである。この作品は、そんな一本になるんじゃないかと思っている。

前半は、「とにかく強引に結婚を迫る女」 vs.「惚れた弱みか、まんまと相手の策略にはまっているだけの情けない男」という展開。後半は、マイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーが壮絶な泥仕合を演じた『ローズ家の戦争』の安いコピー。主人公はコメディ番組のプロデューサーなのだが、私生活の経験をコメディ番組に持ちこむ設定は、おそらく監督のジェフ・フランクリン自身の経験なのだろう。

同じプロットでも、それなりの脚本と演出だったら面白くなりそうだ。しかし、ブラックでもなけりゃ、皮肉でもない脚本のつまらなさ。だらだら間延びした演出。演技下手で、主演俳優としての個性と魅力にすら欠けるメインキャスト。最低センスのスコアと恥ずかしくなる既成曲の選曲。ここまで全てが低レベルでまとまっていると、見ていても辛い。

主演のフレンチ・スチュワートは若き日のトム・ハンクスを意識しているのかどうなのか、しかしハンクスほどの切れ味もなく、爽やかさもない。そもそも映画を背負って立つだけの華がないTV俳優。相手役のブリジット・ウィルソンは『ラスト・サマー』なんかにも出ていた女優で、こちらはまだ華はあるものの演技は学芸会レベル。

そうだ、何が足りないといって、「合いの手の笑い声」が足りないんだよ! ほら、シットコムであるでしょ、収録を見に来ている観客席の笑い声(のように聞こえる効果音)。演出をしながら、あるいは演技をしながら、無意識のうちにコマーシャルを挟むタイミングと、間を埋めてくれる笑い声を前提としてしまったんじゃないか。

インディペンデントの会社で、自ら脚本・監督を務めた劇場映画デビュー作がこれでは、先が思いやられる。TVの世界に帰ったほうがいいよ。

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