9/01/1999

Chill Factor

チル・ファクター (☆☆)

兵器実験での事故の責任を負わされて復讐の念に燃える軍人が、一定の温度を超えると活性化する化学兵器の強奪を図った。間一髪、研究所の脱出に成功した開発者は、その化学兵器を知り合いであった主人公、コーヒーショップ店員に預けたところで息絶えてしまう。主人公はその場に居合わせたアイスクリーム配達人を協力させ、化学兵器を冷却しながら後を追う軍人から逃走することになる。

悪役像、民間人が巻き込まれる展開、化学兵器の視覚的な見せ方などなど、ヒット作『ザ・ロック』をお手本にしたもののように見える。一定の温度で、、、というあたりは『スピード』のアイディアを拝借して転用したものだね。主役は『スクリーム』で売りだしたスキート・ウルリッチ。用意された主演作が、、この程度っていう評価の人だろうか。全く関係ないのに巻き込まれる相棒役にキューバ・グッディングJr。勢いで獲ったとはいえアカデミー賞俳優なのに、いい作品が回ってこない人だな。キャスティングも微妙に安い。監督も、撮影畑出身の新人、ヒュー・ジョンソン。この監督の人選ひとつみるだけで、安手に作ろうという制作側の意図を感じてしまう。

しかし、それ自体を悪くいうつもりはない。娯楽映画としては、よくあるアイディアであっても、上手に焼きなおして見せてくれさえすれば充分だ。

でも、悪役には『ザ・ロック』のエド・ハリスが持っていたような悲劇性まではなく、逆恨みのテロリストにしか見えない。また、主人公には危険な物質を抱え、命をかけるだけのモティベーションが不十分。まあ、うだつの上がらない人生であることは示唆されているのだが、それを、事件に関わる強い動機に結びつけることはできていない。なんだか、いまひとつワザが足りない感じである。

主人公と相棒の描き方は数あるバディ・ムーヴィーのパターンを踏襲。これらのドラマは水と油の2人の対立と理解の物語として提示されるのが定番である。しかし、スキートのキャラクターとキューバのキャラクターの対立軸が明確でないので、やがて友情へつながることになるドラマもあまり盛りあがらない。

舞台が都市ではなく、西部のアウトドア・セッティングであるのは気にいった。この点、ダイナミックな地形を背景にして少し新鮮味を感じるが、結果として化学兵器が活性化した場合の被害も大きくならないんじゃないか、と思えてしまうのが大きな欠点でもある。

こんな作品は、いっそのこと徹底的に破綻してくれたほうが嘲笑いながら楽しめるのだが、意外や小さくまとまっている。ケーブルTVなんかで放送されたお気楽TVムーヴィーというのなら、配役がちょっと豪華で得した気分になれたかもしれないが、劇場作品としては存在を忘れそうになるくらい影が薄い。一応、アカデミー賞俳優だというのにいい役に恵まれないキューバ・グッディングJr.が少し可哀想だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿