9/10/1999

Stir of Echoes

エコーズ(☆☆☆)

『ジュラシック・パーク』や『ミッション・インポッシブル』などのメガヒット作で脚本を担当して名前を知られるデイヴィッド・コープが、リチャード・マシスンの原作を脚色し、自ら監督した1本。

過去に監督作もあるコープなので、本作が監督デビューというわけではない。まとまらなくなった大作をてっとりばやく形にするのが巧いだけの脚本家だと思っていて、現に、無残な『シャドー』、雑な『スネーク・アイズ』なんかの脚本も彼の名義である。そんなわけで、この作品にも端から期待をしていなかったのだが、意外や意外、これが結構拾い物という感じで面白いんだ。こういうジャンルの映画が好きならば、観て損のない仕上がりとしてお勧めしておきたい。 

ある晩、パーティの成り行きで知り合いの女性から催眠術をかけられた主人公が、恐ろしい悪夢に取り憑かれるようになる。彼の目にした不気味な謎の女性は、彼の幼い息子にも見えるようで、その息子はこの世のものならざるものと会話すら交わしているようだ。強迫観念に駆られた男は妻の静止を振り切って家中に穴を掘り出す。その主人公を演じるのが、いまやある意味大人気といって良いケヴィン・べーコンだ。

ハリウッド映画の99年夏はオカルトものばやりだった。傑作『シックス・センス』のあとで公開されたため、本作はそれと比べられ、新鮮味にかける作品と思われるだろう。そもそも、この世のものではない人間と会話をしているらしい子供、といっただけで、パクリではないかなどといらない詮索をされそうだよね。

『シックス・センス』と比べるわけではないが、こちらの脚本にはこれといった捻りがあるわけでない。無駄な枝葉を抜きにして、素直でストレートなものだといえる。演出もオカルト・スリラーとしては非常にオーソドックスなもの。ただ、ケヴィン・ベーコンが催眠術にかけられるシーンなどところどころに、過去2作組んだブライアン・デパルマがやりそうな、技巧的な遊びがあってニヤリとさせられる。
 コ主演に曲者ケヴィン・べーコンを得たことがこの映画にとっては幸運だっただろう。憑かれたように穴を掘り始めてからの狂った様がものすごくいいのだ。こんな役が様になるスターなんて他にいるか?いや、全く、かつての青春スターも凄い怪優になりつつある。今更言い出すことでもないか。また、ジェームズ・ニュートンハワードの音楽はオカルト気分を盛り上げる。組合の規定でクレジットがないが、『セブン』で知られるアンドリュー・ケヴィン・ウォーカーがスクリプト・ドクターを務めたらしい。

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