10/25/1999

Fight Club

ファイト・クラブ(☆☆☆☆)

冴えない生活を送る不眠症の主人公が出会った風変わりな男と始めた共同生活。一緒に組織したアンダーグラウンドのファイト・クラブ。そこには夜な夜な男たちが集まり、お互い、殴り殴られる真剣勝負の刹那。組織は主人公の知らぬところで日に日に拡大し、当初の目的を逸脱していく。

チャック・パラーニック原作を新人脚本家ジム・ウルスが脚色した、『セブン』、『ゲーム』のデヴィッド・フィンチャー監督最新作。出演はエドワード・ノートン、ブラッド・ピット、ヘレナ・ボナム・カーター。

病んだ作品世界に病んだキャラクターと濃い役者。過剰に攻撃的なダストブラザーズによるスコア。後半のとんでもな展開の伏線が、なんとサブリミナル映像というルール違反。破綻寸前でまとまった危うさ。いびつだが、魅力的な傑作、というか、他ではまず見られない大怪作。

CGの助けを借りて自在に動きまわるカメラに象徴されるように、スタイルと物語が拮抗し、ときにスタイルそれ自体が強烈に自己主張を始める。セックス・シーンですらCG処理してみせる、そのあまりに人為的な映像。その居心地の悪さ、そして面白さ。そして、その必然性。

どんな作品にでも自分の刻印を明確に刻み、しかしあくまで商業映画の枠のなかで消化してきたフィンチャーだが、こにいたっては、もはや「ベストセラー原作の映画化」をダシにして、世界を挑発しているとしか思えない。曲者俳優エドワード・ノートンとスター俳優ブラッド・ピットが肉体改造をして熱演しているが、画面に映らない映画監督が、その両方を食ってしまっているといってもいいほどの存在感はなんなのだ。

見た目のスタイルや刺激に惑わされそうだが、本作は、その裏に隠されたテーマ性故に、後々まで残る作品になるのではないかという予感がする。日に日に肉体的なリアリティを失うサイバーな世紀末に、原初的な衝動をあらわにして殴り合う男たちを置き、80年代から引きずりつづけてきたヤッピー文化の尻尾と、膨張する資本主義を鋭く撃ち抜く危険な映画である。それを象徴するのが、本作のラストシーン。このヴィジュアルイメージに、背筋が震えた。初見の映画館で感じた衝撃をどう表現すればよいだろう。何度見返しても惚れ惚れとする。

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