10/01/1999

Three Kings

スリー・キングス(☆☆☆)

イラクとの協定が結ばれて湾岸戦争が終わり、何もすることのない米軍兵士たちは帰国を待つばかりであった。そんななか、主人公とその仲間たちは敵の投降兵士から手に入れた地図に記されているのが、フセインがクウェートの富裕層から集めた金塊の隠し場所だと確信を持ち、金塊強奪を企てる。タイトルは聖書にある「東方の三賢人」に由来するもの。デヴィッドO・ラッセル脚本・監督。出演は、ジョージ・クルーニー、マイク・ウォールバーグ、アイス・キューブが出演。

ジャンル分けが難しいが、政治的なメッセージ性の強いコメディ、というのが一番正確なところだろう。

相当の時間をリサーチに使ったという。その成果かどうか、本筋とは一見して無関係に見えるディテールの描写に面白みがある。敵の根拠地に潜入してみればアメリカを始め世界各国の工業製品が闇市さながら所狭しと並んでいたりする様は唖然とするし、ジーンズを抱えて右往左往する敵の兵士は非常に滑稽だ。実はこういった描写が「企業家精神の発露としてのアメリカの戦争」という皮肉りである。そう、一見して無関係と書いたが、これこそが映画が見せようとする本筋かもしれない。

お気楽に宝の強奪を計画した男たちが、思わぬ困難に遭遇するなかで知る戦争の矛盾と「アメリカの大義」の理不尽さ。人の死体が簡単に転がり、本来救うべき人々が援助もなく見捨てられ、私欲や物欲がうごめく見せかけの平和。自国企業の権益保護を人道主義にすりかえる大国のエゴ。

もちろん、みんな分かっていたことである。何を今更、と言う気もする。しかし、これがメジャー・スタジオの大作として作られる懐の深さ。アメリカの正義にツバを吐いて見せる気骨。もちろん、スターが共演する戦場アドヴェンチャーという娯楽映画のパッケージを周到に用意し、なによりアメリカ兵がアメリカの理想を実現する展開ではあるのだけれど。

反面、不必要に説教臭い映画になってはいないだろうか。主人公たちが最後までお気楽にお宝強奪を目的に走り回る陽性の戦場冒険アクションであったら、もしかしたらこの映画のメッセージはより強く、屈折した形で伝わったかもしれない。それを惜しいと思う。娯楽性とメッセージ性の融合はいつだってムズカしいハードルだが、娯楽性が言い訳に使われたようにも見えるこの作品は、娯楽映画としての強靭さを獲得できていない。

明確なスタイルを持った映像とオフビートなコメディセンス、そしてなによりその度胸で脚本・監督のデヴィッドO・ラッセルが株を上げたのは事実だろう。内臓に食い込んだ弾丸がどのようにダメージを与えるのかを再現して見せるカットなどはアイディアとして秀逸だし、それをアイディアに終わらせず、物語のなかできちんと消化しているところも良い。ただ、どこか作り込み度の高さによって、登場人物たちと観客との距離が開いてしまい、感情移入を難しくしているところがあるんじゃなかろうか。

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