10/08/1999

Superstar

スーパースター / 爆笑スター誕生計画(☆★)

"Dare to Dream" って、タイトルの一部かと思っていたら、宣伝文句だった。

古くは『ブルース・ブラザーズ』、最近では『コーンヘッズ』とか『ウェインズ・ワールド』、『It’s Pat』などなどに代表される、人気コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で人気を博したキャラクターやスキットを元にした映画化作品だ。SNLにレギュラー出ているコメディエンヌ、モーリー・シャノンが演じる、「スーパースターになることを夢見ているが、実は全く冴えない女の子」、メアリー・キャサリン・ギャラガーの学園生活が綴られる。共演はウィル・ファレル。

まあ、笑えるんだけどね。SNL的な意味では。

しかし、TVでやる5分のスケッチと、90分足らずとはいえそれなりの長さがある劇場作品の違いを、どう戦略的に乗り越えるのか、あまり考えていなかったのではないか。これはなかなか難しい問題だと思うんだよね。

こういう「特異なキャラクターもの」は、TVのコントとしては比較的簡単に成立する。単なる異常な人物としてなんの説明なく登場し、その場限りの不条理ギャグや、スケッチを演じ、毎週ミニマルな設定のなかで、いくつかのお決まりネタのバリエーションを繰り出せばいいのだから。

これを映画に膨らませるのは、しかし至難の業である。ジム・キャリーでもない限り「奇妙なキャラクター」一本で1時間半なりの時間を押し通すことなど土台無理な話というものだ。そこで、観客が感情移入出来そうな背景と、水増しされたストーリーを作り、キャラクターに「人間」としての肉付けをするのはある意味、真っ当な方法論であろう。この作品は、少なくともそういうアプローチで組みたてられている。

学校の人気者たちからイジメや嘲笑の対象になっている珍妙な主人公が、しかし、スターになることに対しては「真摯な」思い入れを持っている。それは解りやすい。だが、そこには大きな落とし穴があった。マジなバックグラウンドを設定すればするほど、主人公の珍妙さで素直に笑えなくなってしまうのだ。

ナンセンスものとして乾いた笑いを失ってしまったら、今度はどうするのか。泣きでも入れるのか?『フォレスト・ガンプ』じゃあるまいし、中年のコメディ女優が演じるアホ高校生のバカ・コメディでは、まさかそれも無理な話なのだった。

。モリー・シャノン自身は映画1本を支えきれるほどの芸はないようだが、クライマックスでみせる身体の動きひとつとっても、基本がきちんと出来たひとだと思う。ただこの映画の作り手には、その芸人の「芸」をきちんと見せるという意識もかけていて、一番の見せ場で特撮カットまで使い、「芸」を寸断してしまうという愚を犯している。

モリー・シャノンという人は当然高校生を演じるのには無理のある年齢で、共演のウィル・ファレルともどもそういう年齢の人間が高校生を演じているのだから、演出さえその気になればそのグロテスクさだけでも相当珍妙な作品に出来たのではないか。なんらか勝算のもてるヴィジョンなしに、ただただ漫然とキャラクターの映画化にゴーサインが出ている、現状のSNL映画は、早晩行き詰まるに違いない。

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