スリー・トゥ・タンゴ(☆★)
マシュー・ペリーが主演するロマンティック・コメディで、相手役は『スクリーム』のネイヴ・キャンベル。ライバル役にディラン・マクダーモット。この3人、それぞれ、『Friends』、『Party of Five』、『Law & Order』に出演して、TVで人気に火がついたスターたちだ。監督は主にTVで活躍しているデイモン・サンテステファノという、まあ、一目見て安上がりな企画。ロマンティック・コメディは好物なのでとりあえず見に行った。
主人公は建築事務所勤務である。事務所の命運がかかった大事なプロジェクトのクライアントから、ある依頼をうけるのだが、それは、クライアントの愛人を監視する役だった。しかも、その依頼はそもそも主人公がゲイであるという勘違いによるものだ。断れない依頼ゆえに「監視」をするうち、その女性に恋をしてしまったから、さあ大変。
「ゲイと勘違いされて大騒ぎ」というネタは、2年前の『イン&アウト』から進歩がない。そんなことで笑いをとっている時代ではないと思うのだけれど、世間は意外に心が狭く、保守的で、こういう話で笑ってくれると映画の作り手は考えているらしい。
しかし、人気TVドラマの売れっ子が共演し、TV畑の監督が作ったこの映画、残念なことにというのか、想像通りというのか、TV的に生ぬるい、笑えないコメディになっちまった。これじゃわざわざ劇場にかける必然性を感じない。
勘違いに基づくドタバタと、好きな人に好きだと告白できない切なさ。ロマンティック・コメディだというのなら、ちゃんと笑わせ、ちゃんとロマンティックに締めてほしいところだが、どちらにしても中途半端。笑わせどころのギャグもアイディアも冴えない。マシュー・ペリーが出ていれば、たいした工夫がなくても観客が満足するという思い上がりがあったんじゃないか。
そのマシュー・ペリーは一応、スラップスティック型のコメディ演技を売りにしているようなのだが、体で笑いを取るにしては動きにキレがない。そのうえ、演技自体も大味で、繊細な「男心」を演じて見せることなどできるようには思えない。これじゃ、ただつったっているだけのデクノボウだな。
ヒロインのネイヴ・キャンベルは、キャラクターの「安っぽい」感じにはよくハマっているのだが、主人公が「一目ボレ」するだけの説得力が感じられない。もともと美女というタイプではないのに加え、メイクが酷いんだ。化粧してわざわざ醜くなるなんて、なんのこっちゃ。
冴えない映画のなかで一人気を吐いているのが主人公の上司役をやっているオリバー・プラットだ。笑いをとれ、演技ができ、しかも個性的な風貌で、メインの3人を吹き飛ばす存在感。この人は、なんだか役を選ばずなんでもやっていて、あちこちで顔を見る気がするのだが、そこが非常に頼もしい。やはり、脇とはいえ映画の顔は違う。彼がいなかったら途中で劇場を出てしまいたくなるところだったよ。
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