8/03/2008

Čeburaška

チェブラーシカ(☆☆☆★)

2001年に日本に紹介され、一世を風靡した『チェブラーシカ』の人形アニメーションだが、その後、権利関係で問題が起こって大変な状況だったらしい。そうしたややこしい問題を全てクリアした上で全4話、デジタルリマスターの完全版が、「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」配給で公開されるというのでイソイソと劇場に出かけた。あまりこだわりなくとびこんだところ、日本語吹替版の上映であったが、まあ、ロシア語で話されても当方、理解不能だし、人づてに聞くところではこの日本語吹替版が秀逸で可愛らしいとのことだったので、それを堪能することとした。これは、南の国から送られてきた果物(オレンジ?)の箱のなかに詰められていた、小さくて茶色い毛むくじゃらの生き物「チェブラーシカ」が、友達を作り、周囲の人々と交流していく姿を描いたお話しである。原作エドゥアルド・ウスペンスキー、キャラクター設定・美術レオニード・シュワルツマン、監督はロマン・カチャーノフ。日本語吹替版でのチェブの声は大谷育江(ピカチュウの人だってさ)。4話あわせて70分程度の上映時間であった。

ロシア史上、最も愛される人形童話だという。ロマン・カチャーノフによるこの作品の製作年代は1969年の「ワニのゲーナ」、1971年の「チェブラーシカ」、1974年の「シャパクリャク」、1983年の「チェブラーシカ学校へ行く」と、長い期間にわたっているが、続けてみてもそれを感じさせないところが丁寧に作られた作品であることを感じさせる。この作品が作られたころの背景となっている旧ソビエト連邦下の社会や人々の生活についての理解が心許ないので、お話し、設定等々、なぜそういう展開になるの?それはいったい何?という小さな疑問はいっぱい生じるのだが、それもまた、自分の知らない世界を覗いているような好奇心をくすぐられるところである。チェブラーシカらがあこがれるボーイスカウトのような集団活動の様子や、公害問題、学校を修理しているはずの怠惰な労働者の姿などは面白く見た。辛らつになり過ぎない程度の社会風刺をはっきりと含んだ物語には、そこはかとない物悲しさと切なさを湛えた不思議な魅力がある。

しかし、もちろんそれを支えているのは、なんといってもキャラクターたちの表情や演技だ。チェブラーシカや友人となるワニのゲータらのキャラクターが生き生きと動くのをみていると、それだけで飽きることはない。これこそまさに、命のない人形に命を吹き込む(=アニメート)技術というものであろう。CGI時代の安易な作品には決定的に欠けている作り手の魂とでもいうべきものがそこに宿っている。物を動かして生命を宿らせることへの執念を感じさせるのである。考えてみれば、アニメーションの魅力とは、それに尽きるといえるのではないか。結局、この作品が人々の心を捉えて話さないのは、単にキャラクターが可愛いからではないのである。

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